・移動距離と変位の違い
・速さと速度の違い
物理や物理基礎では「距離と変位」や「速さと速度」を区別します。
速さと速度なんて同じなように思えるのですが、この2つはきちんと使い分けられているのです。
今回は「距離と変位」の違い、「速さと速度」の違いについて、わかりやすく簡単に解説をします。
移動距離と変位とは
「位置の変化量」のこと。マイナスになる可能性もある。
物理では「x」という記号を使い、単位は[m]
なお、移動距離はマイナスにならない。
原点Oに人がいたとします。
この人がO→A→Bと移動をするときを考えましょう。
この人は、O→Aで30m移動し、A→Bで80m移動し、合計110mの距離を移動したことになります。
しかし、最初と最後だけを見ると結局50m左に進んだだけと見ることもできますよね。
このように、実際に移動した長さのことを移動距離、最初と最後でどれくらい位置が変わったのかを変位と言います。
移動距離…実際に移動した長さ
変位…最初と最後でどれくらい位置が変わったか
変位を考えるとき、途中どこに寄ったかは関係なく、最初と最後の場所だけを見ます。
「何m進んだの?」ではなく、「結局何m位置が変わったの?」です。
性質上、移動距離は必ずプラスの値になるのですが、変位はプラスになることもあればマイナスになることもあります。
「マイナスが出てくるかもしれない」と、問題を解くときに注意しておきましょう。
変位xはマイナスになる場合もある
物理では、距離ではなく変位のことをx[m]と表します。
ただし、真っ直ぐ進むだけの運動のような、変位と移動距離が等しくなる場合は、移動距離をxとする場合もあります。
ここで、前回学習した「x=vt」を考えてみましょう。
xがマイナスになるということは、vやtもマイナスになるかもしれませんよね。
それが速さと速度の違いに繋がっていきます。
速さと速度の違いとは
速さに向きを加えたもの
速度とは、速さに向きを加えたもののことです。
速さの定義に関しては前回の内容を確認してください。
速さとは前回でも説明した通り、「単位時間あたりに進む距離」「1秒で何m進むか」のことですが、
速度とは、速さに向きを加えたもののことであり、速さと同様にv[m/s]という記号で表します。
速さを考えると、右向きも左向きも「10m/s」と書けばよいのですが、速度では「右向きに10m/s」「左向きに10m/s」と表現しなければなりません。
速度とは「〇〇向きに〇〇m/s」のような、向き+速さのことなのです。
右向きを正とするならば、
10m/sと書けば「右向きに10m/s」
-10m/sと書けば「左向きに10m/s」
という意味になります。
「速度」は速さ+向きのこと。マイナスになる可能性もある。
例題
東向きを正とし、次の速度について符号を付けて表わせ。
(1)東向きに50m/s (2)西向きに3m/s
これだけ見ると簡単なのですが、問題文にさり気なく「西向き」と書いてあることに気が付かず、マイナスを付け忘れることがよくあるので気を付けましょう。
他にも注意するべき点があります。
「速度はどれくらいか」と聞かれたら「向き+速さ」で答える必要がありますが、
「速さはどれくらいか」「速度の大きさはどれくらいか」という聞かれ方の場合、向きは必要ではありません。
速度…向きが必要
速さ…向きはいらない
速度の大きさ…速さのこと(向きはいらない)
まとめ
移動距離は必ずプラスですが、変位だとマイナスになる可能性があります。
同様に、速さは必ずプラスですが、速度だとマイナスになる可能性があります。
移動距離と変位、速さと速度の大きな違いは「マイナスになるかもしれない」こと
「西向き」「東向き」には注意
「速度の大きさ」は速さのことなので、必ずプラスになる
問題文の書き方によって答えが変わるので、今後の内容で例題を解き、慣れていく必要がありますね。
以上で今回の解説を終わります。