なぜ高校で物理基礎・物理を勉強するのか?

なぜ高校で 物理基礎・物理 を勉強するのか?
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教師として物理を教えていると、
「どうして物理を勉強する必要があるんですか?」
とよく質問されます。

物理を勉強すればするほど物理の奥深さと必要性を感じるものですが、「物理を勉強する理由」を知らない・分からない人は多いようです。

今回は「なぜ高校で物理基礎・物理を勉強するのか?」について説明していきます。

なぜ高校で物理基礎・物理を勉強するのか?

社会や暮らしを良くするため

物理に限った話ではありませんが、“物理学”は人類が積み重ねてきた歴史と英知の集大成です。

社会には様々な問題があります。
環境問題、原発リスク等のエネルギー問題、少子高齢化、貧困化、国際平和…

物理学は「社会問題を解決するために必要なもの」という一面を持っています。
物理学が更に発展すれば、社会や暮らしが今よりも良くなるでしょう。

また、交通事故を回避したり、自然災害に備える等、危機管理としても物理は有用です。
物理の正しい知識があれば、変なものを電子レンジで温めようと思いませんし、コンセントにシャー芯を入れることもありません。

物理を学べば、人類が今まで積み重ねてきた「様々な問題を解決する方法」が身につくようになるでしょう。

この考えは物理に限らず、数学や社会等でも同じですね。
これが物理を勉強する理由の1つです。

多くの人が基礎的な教養を身に付けるため

多くの人が基礎的な教養を身に付けるために、高校で物理基礎・物理を学ぶ必要があります。

例えば、原発問題は一人で解決できる問題ではありません。
もし、1人の超エリートが「原発問題を完璧に解決する方法」を提案したとしても、他の人が物理を全く知らなければ原発問題を解決することはできないでしょう。

「原発問題を完璧に解決する方法」があったとしても、他の人がその方法を理解する能力を持っていなければ、その方法に協力せず、問題は解決しないと考えられます。

原発問題に限らず、世の中には多くの問題があります。
これらの問題を解決するためには、多くの人が物理の基礎的な教養を身に付け、正しく判断する能力を持たないといけません。

これも、物理を勉強する理由です。

騙されないため

物理では「なぜ?」という懐疑的な考え方を大切にしています。

世の中には疑似科学と呼ばれるものが数多く存在することをご存知でしょうか。
ニセ科学、似非科学ともいいますね。

有名どころだと、マイナスイオン、反ワクチン運動、様々な『健康食品』等が疑似科学と言われています。
もし科学の基礎的な知識を持っていれば、「それは疑似科学なのでは?」と疑問を持つことが可能です。

例えば、

「ボディソープは肌から成分を吸収して体内に溜まっていく。普段は大丈夫だが、妊娠中の母親にとっては危険な可能性があるため、妊娠中は他のボディソープを使うべきだ。」

と言われたらどうしますか?

科学の基礎的な知識があれば、間違った判断をする可能性は低くなります。
もし多くの人が科学の知識を持っていなければ、私は簡単に人を騙すことができるでしょう。

逆に、世の中の科学に対する知識のレベルを知っていれば、お金稼ぎに使えるかもしれませんね。

他人の意見を鵜呑みにせず、自分で判断するために物理の知識が必要です。

人材育成のため

スマホ、AI、電車や飛行機、インフラ整備…
物理が世の中の役に立っていることを否定する人は誰一人いないでしょう。

そして、今ある社会を維持したり、新しい技術や物理の理論を生み出すためには物理に精通した人材が必要です。

「そういうことをしたい人だけ物理を勉強すればいいじゃないか」と思うかもしれませんが、大人から見たら誰が物理に精通する人材になるのか分からないため、多くの人に物理を教える必要があるのです。

「私は物理に精通した人材になる予定はない!」と言われても、学校として”物理の授業を行わない”理由にはなりません。

多くの人が学ぶことでエリートが生まれる

「多くの人が物理を学ぶことで、物理のエリートが生まれる」と、私は個人的に考えています。

例えば、日本のスポーツの競技人口は、サッカーが約750万人、野球が約730万人です。

もし、野球をしている730万人が全員サッカーをしていたら、日本のサッカーはもっと強くなると思いませんか?
スポーツの競技人口と強さには何か関係があっても不思議ではないですよね。

日本のサッカーと野球の競技人口はほぼ同じですが、サッカーよりも野球の方が強いイメージがあります。
世界の競技人口を見ると、サッカーは約2億5000万、野球は約3500万人です。

世界的に見ると野球よりもサッカーの方が人気であるため、他の国の方がサッカーが強いのではないでしょうか。
サッカーをしている人が世界にたくさんいるため、サッカーの天才が多く現れるのです。

これは、学問でも同じでしょう。
貴方は物理を将来使わないかもしれませんが、貴方が物理を勉強することで物理のエリートが生まれるかもしれないのです。

学習指導要領に記載されている目標

物理基礎・物理の目標は高等学校学習指導要領(平成30年告示) に記載されています。

理科の目標

自然の事物・現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)自然の事物・現象についての理解を深め、科学的に探究するために必要な観察、実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2)観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う。
(3)自然の事物・現象に主体的に関わり、科学的に探究しようとする態度を養う。

物理基礎の目標

物体の運動と様々なエネルギーに関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、物体の運動と様々なエネルギーを科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)日常生活や社会との関連を図りながら、物体の運動と様々なエネルギーについて理解するとともに、
科学的に探究するために必要な観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
(2)観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う。
(3)物体の運動と様々なエネルギーに主体的に関わり、科学的に探究しようとする態度を養う。

物理の目標

物理的な事物・現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、物理的な事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)物理学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め、科学的に探究するために必要な観察、実験などに関する技能を身に付けるようにする。
(2)観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う。
(3)物理的な事物・現象に主体的に関わり、科学的に探究しようとする態度を養う。

簡単にまとめると、それぞれ

(1)「知識・技能」を深める
(2)「思考力・判断力・表現力」を高める
(3)「人間性」を養う

ことについて書いてあります。

つまり、高校で物理基礎・物理を勉強する理由は、この3つを達成するためと日本の教育では考えられています。

まとめ

物理を勉強する理由は、いい学校や、いい会社に入るためではありません。

社会や暮らしを良くするため、多くの人が基礎的な教養を身に付けるため、騙されないため、人材育成のため、多くの人が学ぶことでエリートが生まれるため、「知識・技能」を深めるため、「思考力・判断力・表現力」を高めるため、「人間性」を養うため…

様々な理由が集まり、物理を勉強することになっています。

どれか一つでも納得のいく理由を見つけられたことを期待します。

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