「目から鱗が落ちる」とは、何かがきっかけで今まで見えてなかったものが見えるようになったり、迷いがなくなったりすることを表す言葉です。
聖書が語源である諺は多いのですが、「目から鱗が落ちる」の語源も聖書から来ています。
今回は、「目から鱗が落ちる」の語源について簡単に説明します。
目から鱗が落ちるの語源は新約聖書
「目から鱗が落ちる」の語源である新約聖書『使徒言行禄』第9章は下記のような内容です。
パウロ(当時はサウロと名乗っていた)はイエスの使徒を迫害していた
天から光が差し「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか」とイエス・キリストの声を聞いた
その後、目が見えなくなった
アナニアという使徒がサウロのために祈った
サウロの目からうろこのようなものが落ち、目が見えるようになった
話はここで終わらず先があるのですが、内容は大体こんな感じです。
目が見えなくなったパウロの目が再び見えるようになったとき、目から鱗のようなものが落ちたことから、迷いが晴れ今まで見えなかったものが見えるようになることを「目から鱗が落ちる」と言います。
パウロは新約聖書の著者の一人でもあるキリスト教の基礎を築いた重要人物なのですが、最初からキリスト教の使徒ではありませんでした。むしろキリスト教を迫害する側でした。
キリスト教を迫害する熱心なユダヤ教徒であったパウロが、イエス・キリストの声を聞くことによってキリスト教の使徒になるというこの話は、まさに「信じる宗教を変えるほど、今まで見えていなかったものが見えるようになった」という諺そのものですね。
この話を「パウロの回心」と言います。
新約聖書『使徒言行禄』第9章
せっかくなので、新約聖書『使徒言行禄』第9章を読んでみましょう。
1 さてサウロは、なおも
主 の弟子 たちに対 する脅迫 、殺害 の息 をはずませながら、大祭司 のところに行 って、2 ダマスコの
諸 会堂 あての添書 を求 めた。それは、この道 の者 を見 つけ次第 、男女 の別 なく縛 りあげて、エルサレムにひっぱって来 るためであった。3 ところが、
道 を急 いでダマスコの近 くにきたとき、突然 、天 から光 がさして、彼 をめぐり照 した。4
彼 は地 に倒 れたが、その時 「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害 するのか」と呼 びかける声 を聞 いた。5 そこで
彼 は「主 よ、あなたは、どなたですか」と尋 ねた。すると答 があった、「わたしは、あなたが迫害 しているイエスである。6 さあ
立 って、町 にはいって行 きなさい。そうすれば、そこであなたのなすべき事 が告 げられるであろう」。7 サウロの
同行者 たちは物 も言 えずに立 っていて、声 だけは聞 えたが、だれも見 えなかった。8 サウロは
地 から起 き上 がって目 を開 いてみたが、何 も見 えなかった。そこで人々 は、彼 の手 を引 いてダマスコへ連 れて行 った。9
彼 は三日間 、目 が見 えず、また食 べることも飲 むこともしなかった。10 さて、ダマスコにアナニヤというひとりの
弟子 がいた。この人 に主 が幻 の中 に現 れて、「アナニヤよ」とお呼 びになった。彼 は「主 よ、わたしでございます」と答 えた。11 そこで
主 が彼 に言 われた、「立 って、『真 すぐ』という名 の路地 に行 き、ユダの家 でサウロというタルソ人 を尋 ねなさい。彼 はいま祈 っている。12
彼 はアナニヤという人 がはいってきて、手 を自分 の上 において再 び見 えるようにしてくれるのを、幻 で見 たのである」。13 アナニヤは
答 えた、「主 よ、あの人 がエルサレムで、どんなにひどい事 をあなたの聖徒 たちにしたかについては、多 くの人 たちから聞 いています。14 そして
彼 はここでも、御名 をとなえる者 たちをみな捕縛 する権 を、祭司長 たちから得 てきているのです」。15 しかし、
主 は仰 せになった、「さあ、行 きなさい。あの人 は、異邦人 たち、王 たち、またイスラエルの子 らにも、わたしの名 を伝 える器 として、わたしが選 んだ者 である。16 わたしの
名 のために彼 がどんなに苦 しまなければならないかを、彼 に知 らせよう」。17 そこでアナニヤは、
出 かけて行 ってその家 にはいり、手 をサウロの上 において言 った、「兄弟 サウロよ、あなたが来 る途中 で現 れた主 イエスは、あなたが再 び見 えるようになるため、そして聖霊 に満 たされるために、わたしをここにおつかわしになったのです」。18 するとたちどころに、サウロの
目 から、うろこのようなものが落 ちて、元 どおり見 えるようになった。そこで彼 は立 ってバプテスマを受 け、19 また
食事 をとって元気 を取 りもどした。サウロは、ダマスコにいる弟子 たちと共 に数日間 を過 ごしてから、20 ただちに
諸 会堂 でイエスのことを宣 べ伝 え、このイエスこそ神 の子 であると説 きはじめた。21 これを
聞 いた人 たちはみな非常 に驚 いて言 った、「あれは、エルサレムでこの名 をとなえる者 たちを苦 しめた男 ではないか。その上 ここにやってきたのも、彼 らを縛 りあげて、祭司長 たちのところへひっぱって行 くためではなかったか」。22 しかし、サウロはますます
力 が加 わり、このイエスがキリストであることを論証 して、ダマスコに住 むユダヤ人 たちを言 い伏 せた。23
相当 の日数 がたったころ、ユダヤ人 たちはサウロを殺 す相談 をした。24 ところが、その
陰謀 が彼 の知 るところとなった。彼 らはサウロを殺 そうとして、夜昼 、町 の門 を見守 っていたのである。25 そこで
彼 の弟子 たちが、夜 の間 に彼 をかごに乗 せて、町 の城壁 づたいにつりおろした。26 サウロはエルサレムに
着 いて、弟子 たちの仲間 に加 わろうと努 めたが、みんなの者 は彼 を弟子 だとは信 じないで、恐 れていた。27 ところが、バルナバは
彼 の世話 をして使徒 たちのところへ連 れて行 き、途中 で主 が彼 に現 れて語 りかけたことや、彼 がダマスコでイエスの名 で大胆 に宣 べ伝 えた次第 を、彼 らに説明 して聞 かせた。28 それ
以来 、彼 は使徒 たちの仲間 に加 わり、エルサレムに出入 りし、主 の名 によって大胆 に語 り、29 ギリシヤ
語 を使 うユダヤ人 たちとしばしば語 り合 い、また論 じ合 った。しかし、彼 らは彼 を殺 そうとねらっていた。30
兄弟 たちはそれと知 って、彼 をカイザリヤに連 れてくだり、タルソへ送 り出 した。31 こうして
教会 は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤ全 地方 にわたって平安 を保 ち、基礎 がかたまり、主 をおそれ聖霊 にはげまされて歩 み、次第 に信徒 の数 を増 して行 った。32 ペテロは
方々 をめぐり歩 いたが、ルダに住 む聖徒 たちのところへも下 って行 った。33 そして、そこで、八
年間 も床 についているアイネヤという人 に会 った。この人 は中風 であった。34 ペテロが
彼 に言 った、「アイネヤよ、イエス・キリストがあなたをいやして下 さるのだ。起 きなさい。そして床 を取 りあげなさい」。すると、彼 はただちに起 きあがった。35 ルダとサロンに
住 む人 たちは、みなそれを見 て、主 に帰依 した。36 ヨッパにタビタ(これを
訳 すと、ドルカス、すなわち、かもしか)という女 弟子 がいた。数々 のよい働 きや施 しをしていた婦人 であった。37 ところが、そのころ
病気 になって死 んだので、人々 はそのからだを洗 って、屋上 の間 に安置 した。38 ルダはヨッパに
近 かったので、弟子 たちはペテロがルダにきていると聞 き、ふたりの者 を彼 のもとにやって、「どうぞ、早 くこちらにおいで下 さい」と頼 んだ。39 そこでペテロは
立 って、ふたりの者 に連 れられてきた。彼 が着 くとすぐ、屋上 の間 に案内 された。すると、やもめたちがみんな彼 のそばに寄 ってきて、ドルカスが生前 つくった下着 や上着 の数々 を、泣 きながら見 せるのであった。40 ペテロはみんなの
者 を外 に出 し、ひざまずいて祈 った。それから死体 の方 に向 いて、「タビタよ、起 きなさい」と言 った。すると彼女 は目 をあけ、ペテロを見 て起 きなおった。41 ペテロは
彼女 に手 をかして立 たせた。それから、聖徒 たちや、やもめたちを呼 び入 れて、彼女 が生 きかえっているのを見 せた。42 このことがヨッパ
中 に知 れわたり、多 くの人々 が主 を信 じた。43 ペテロは、
皮 なめしシモンという人 の家 に泊 まり、しばらくの間 ヨッパに滞在 した。
こういう話が2000年弱も前に作られたのって、冷静に考えて凄いですよね。
最後に
「目から鱗が落ちる」の語源は新約聖書『使徒言行禄』第9章、イエスの声を聞いて目が見えなくなったサウロの目が再び見えるようになったとき、目から鱗が落ち、さらに回心をしたという話から作られた言葉です。
他にも、「豚に真珠」「砂上の楼閣」「働かざる者食うべからず」など、聖書が語源となっている諺はいくつかあります。
今回は以上です。