かいしー読書部では、私が読んだ本を紹介していきます!
今回読んだのは、ちょっとだけ興味があった『音大崩壊』!
音大のイメージってどうですか?
幼い頃から音楽を習っている人が演奏家を目指すための大学。
お金持ちも多いが、奨学金を借りながらなんとか通っている学生もいる。
費用が高いわりに就職が弱く、定員割れが問題になっている。
JAZZとかROCKではなくクラシックこそ至高、音はアンプを通さない生音が至高と言ってる人が多い。クラシック音楽は最高の美。
そんなイメージじゃないでしょうか?
というか、僕はこういうイメージです。
みたいなことを、ずーっとお互い理解せず言い合ってるイメージですね。
音大の就職活動に関して外部から情報を得るためにはYouTubeで音大卒の人の動画を観るのが手っ取り早いと思うのですが、せっかくなので本も読んでみようと思い手を取りました。
音大の就職関係の本を書いている人ってこの人以外にいるんですかね?僕は知らないので、他にいたら教えてほしいです。
音大崩壊』|要約・著者紹介
要約
現在、音楽大学が危機に瀕しています。
経営難に喘ぐ音大が急増し、教育環境の低下や学生募集を停止した大学も出てきており、この流れはさらに加速していくことが予想されます。
その理由のひとつは、少子化を大学進学率の上昇が凌駕し、大学生数そのものは増加しているにもかかわらず、音楽大学は大幅な学生数減少に見舞われていることにあります。
ではなぜ音大に学生が集まらなくなってきたのでしょうか?
昨今の世界の情勢や社会状況を背景に、音楽をはじめとする芸術教育の意義や役割が大きく変わることが想定されます。
そのなかで音大の衰退は、単に音楽教育の牙城が崩されるというだけでなく、日本の文化・芸術の劣化、ひいては日本の将来に直結する重大な問題となり得ます。
また音楽を学ぶことは、芸術性や演奏スキルを高めるというだけでなく、これからの時代を生き抜くヒントやスキルを身につける、という意味を持ちます。
そして音大は、音楽を学ぶ場所というだけでなく、日本に必要となる人材を輩出する拠点となり得るのです。
本書では、音大が置かれている隠された状況を解き明かし、音楽を学ぶ本当の意味を問い直します。そのうえで、音大が生き残るための戦略を提示するものです。
音大はどこで道を間違えたのか?
生き残るにはどうしたらよいか?
音楽を教える意味、学ぶ意味は何か?
数々のデータから音大の危機を明らかにし、この先の音楽教育の道筋を示す衝撃作!
音大について定員の推移や入学者数等のデータを使って分析
↓
ありきたりな教育論と自分語り
↓
音大がやるべきことは何か?筆者の意見
大雑把にいうとこういう内容です。
著者紹介
大内孝夫(おおうち・たかお)
名古屋芸術大学芸術学部教授。みずほ銀行支店長、銀行等保有株式取得機構運営企画室長(常勤トップ)などを歴任後、2020年4月より現職。全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)キャリア支援室長/組織運営委員/ピアノ教室経営相談担当、ドラッカー学会会員、日本証券アナリスト協会検定会員。
著書に『「音大卒」は武器になる』『「音大卒」の戦い方』『音大出てどうするの?』(漫画:田中マコト氏)(すべてヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)、『AI時代最強の子育て戦略「ピアノ習ってます」は武器になる』(音楽之友社)ほか。
銀行にいたけど今は音大で働いていますってことですかね?
孤立しがちな小さな業界に外部の人が来て意見するの、本質を考え直すきっかけになって良いことだと思います。
『音大崩壊』を読もうと思ったきっかけ
「音大に進んでも就職どうするの?」という疑問に対する解が欲しかったからです。
音大を卒業しても生活が大変そうなイメージと、そのイメージのせいで音大は全体的に定員割れしていて厳しいという情報が合わさり、音大の事情を知っておきたいなと思ったんですよね。
音大卒なんてほとんどその世界で食っていけない
教員になるか玉の輿に乗るくらいしかないだろ
芸術系は実家が太くないと無理
音大はお嬢様が行くところ
のようなイメージが世間一般に広がってる。
このようなイメージが広まってる時点で音大の(経営のための)イメージ戦略は失敗していると思いますが、実際どうやって対抗していくつもりなんだろう、対抗策は何かあって未来はあるのかなということの判断材料に使えるかなって思って読みました。
『音大崩壊』から学んだことと実用性
音大生が減っている
まず、音大生が昔と比べて減っているという事実。
1990 | 2000 | 2005 | 2007 | 2010 | 2015 | 2020 | |
音楽関係学科の学生数 | 22,053 | 22,829 | 20,509 | 19,739 | 18,535 | 16,140 | 15,592 |
全体的に音大生は減ってるんですね。
2005 | 2010 | 2015 | 2020 | |
定員 | 定員 | 定員 | 定員 | |
桐朋学園大学 | 140 | 150 | 150 | 180 |
国立音楽大学 | 450 | 450 | 400 | 320 |
武蔵野音楽大学 | 735 | 500 | 310 | 310 |
東京音楽大学 | 310 | 310 | 310 | 310 |
洗足学園大学 | 330 | 330 | 420 | 530 |
昭和音楽大学 | 275 | 275 | 275 | 285 |
首都圏の私学はうまく時代に適応した大学とそうでない大学があるような印象です。
一番びっくりしたのは女性の大学進学率は2000年〜2018年の間に31.5%から57.8%に上昇したのに、2000年〜2019年で女子の音大生が7988人も減少していること。
これだけ女性の進学率が増えてるのに、女性の学生数が減ってるのは例外すぎる。
※男子は微増している。
女子の学生は増えているはずなのに、音大全体で見たら女子が減っている。
音大は女子の割合の方が圧倒的に多いですから、音大生が減っているのは女子が減っているからだと言って間違いなさそうです。
イメージ通りではありましたが、まず音大生は減少傾向にあるということはデータで確認できましたね。
中には定員を増やしている音大(クラシック以外にも力を入れている?)はあれど、定員自体が減ってる大学が多いみたいです。
経済的に厳しい家庭が増えたからだとは言いきれない
音大って学費が高いし、経済的に厳しい家庭が増えると学生も増えなくなるんじゃないか?
→経済的に厳しくなったのは音大に通う学生だけではないが、全体で見ると進学率は上昇している。奨学金を借りて大学に通う人もいるので、音大生が少なくなった理由は学費が高いからとは言い切れない。
女性が社会進出するようになった
女性の社会進出することにより、「就職意識」や「経済的な自立」が高まりました。
社会進出が増えたことによって専業主婦という考え方が減り、共働きが前提の関係が増え、「女性は結婚すればいい」という意識が無くなりました。
音大は就職に力を入れるのではなく「演奏家」を目指すよう教育をし続けたので、全然稼げない演奏家達が量産され、「音大は就職に弱く、稼げない」というイメージが付き人気が落ちたのではないか?
ということですね。
音大が一丸となっていない
・スポーツ庁はあるのに音楽庁はない。
・スポーツ界出身の国会議員はいるのに音楽業界の立場に立った強い影響力を持つ議員があまり見かけない(知らないだけでいる?)。
音楽業界が一つの組織になって政治に影響力を与えられるようにしないと、業界そのものの発展が上手くいかないという側面はあると思いました。
当たり前のことように思えますが、音大はそういうことをやってないみたいです。
感想
感想
問題提起はもっともなことだと思いました。
女性の音大生の減少と社会的なニーズの変化の指摘はどの音大も無視できないものでしょう。
クラシック音楽だけではなく、JAZZやROCK等の別の音楽、裏方と呼ばれるような企画運営に関すること、就職に強くなるような施策を行うことで、
「音大って小さい頃から音楽習ってないと行けないんでしょ?」
「クラシック音楽しか学べないんでしょ?」
というイメージを払拭し、演奏家教育も行いつつ時代のニーズに合わせた教育も行っている音大が生き残るんじゃないかというのは、その通りだと思います。
ただ、クラシックを大切にする演奏家教育の文化的価値は非常に高く、その強みを鈍らせるようなことに安易に同意できません。
しかし、クラシック音楽を大切にして演奏家教育を行い続ける為に、今の時代のニーズにあった音楽教育も行うことで経営的に余裕を持たせましょうという考えは合理的な判断なんじゃないかなと思います。
別に、クラシック音楽を学んでる人に無理やりJAZZやHIPHOPを学ばせるわけじゃなくて、同じ大学構内にクラシック音楽を学ぶ人と今の時代に合った音楽を学ぶ人が共存しても良いんじゃないか。
従来の演奏家教育と今の時代に合った教育は同じ大学内で共存できるんじゃないかなって思いますね。
多分ですが、大学内で「クラシック音楽以外の音楽をうちの大学で学ぶことができるようにするなんて反対だ!」という意見が根強いんじゃないかなって思っています。
洗足学園の附属高校が音楽科の募集を停止したとき、他の音大の先生が洗足を下に見てたという話を聞いたことがあります。
今では見事な進学校として洗足学園中学高等学校は成功していますし、洗足学園と昭和音大はクラシック音楽以外の音楽活動にも力を入れてますよね。私も何人か生徒を送っています。
現状維持だとジリ貧なまま、何かしらの対応をしないといけないだろうなと何となくですが思います。
音大崩壊って本当なの?
音大生が減っている、定員を減らしているのに定員割れしている音大が多くあることは事実です。
といっても、現状「音大が崩壊」をしているわけではないですし、キャッチーなフレーズを使って読む人を増やそうとしている、こういう著書を増やすことで自分の地位を確保しようとしているのかなと感じました。ABEMAにも出演していましたしね。
ただ、「音楽だけじゃ食っていけない」「音大卒の就職に関する話題」を本にしている人が他にあまりいないので(僕が知らないだけ?いたら教えてほしい!)、なんとかしようと働きかけてて良い人だなと思いました。
まぁ、音大全体がこのままだと、いつか音大が崩壊(入学者数の激減による募集停止?)してしまうんじゃないかという懸念はあるでしょうね。
もちろん、中には今の時代に合わせて適切な生存戦略を行っている大学もあるので、時代に合わせて淘汰されるだけとも言えますが。
感想その2
最初の方がデータを用いて説明していて納得もできるしもっともなことを言っていると思いましたが、途中の教育論は必要なかったかな。
多分、音大崩壊ってテーマだと書けることが少なくて仕方なく個人の考えを入れたのかなって思いました。
上にも書いたような問題提起はもっともで、しっかり考えていかないといけないでしょうね。
個人的には、
・音大と音大が連携する、特に「就職に弱い」というイメージを払拭するようにキャリアに対する回答を用意する。
・クラシック音楽以外の音楽も受け入れる。
この2つは必須というか、きちんと真面目に検討する必要があるんじゃないかなと思いました。