『「学力」の経済学』エビデンスで教育に関する問いに答える

「学力」の経済学
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こんにちは!かいしーです!

かいしー読書部では、私が読んだ本を紹介していきます!

今回紹介するのは『「学力」の経済学』です。

明らかに『幼児教育の経済学』から影響を受けた本のタイトルですね。

気持ちは分かります。私もめっちゃ影響を受けていて、非認知能力信者になってるところあるので。

教育に関するエビデンスを紹介するみたいなので、どんな内容なのか楽しみに読みました。

『「学力」の経済学』|要約・著者紹介

要約

「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」
思い込みで語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

「データ」に基づき教育を経済学的な手法で分析する教育経済学は、
「成功する教育・子育て」についてさまざまな貴重な知見を積み上げてきた。

そしてその知見は、
「教育評論家」や「子育てに成功した親」が個人の経験から述べる主観的な意見よりも、よっぽど価値がある―
むしろ、「知っておかないともったいないこと」ですらあるだろう。

本書は、「ゲームが子どもに与える影響」から「少人数学級の効果」まで、
今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果を、科学的根拠から解き明かした画期的な一冊である。

・経済学には「教育の収益率」という概念がある。「1年間追加で教育を受けたことによって、その子どもの将来がどれくらい高くなるか」数値で表す。教育は株や債券よりも収益率が高い。

・「テストでよい点を取ればご褒美」と「本を読んだらご褒美」だったら、本を読んだらご褒美の方が良い。結果などのアウトプットに報酬を与えるより、本を読むなどのインプットに報酬を与えた方が良い。なぜなら、インプットに報酬を与える方が「何をすべきか明確」だから。ただし、具体的な道筋を示してくれる指導者や先輩がいるならアウトプットに報酬をを与えても効果あり。

・ご褒美は子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせない。

・自尊心が高いと学力も高いが、それは学力が高いと自尊心が結果的に高くなるだけであり、自尊心を高めたからといって学力が高くなるわけではない。むやみやたらに子どもを褒めると、実力の伴わないナルシストを育てることになるかも。

・「頭がいいのね」と「よく頑張ったわね」はよく頑張ったわねの方がよい。努力をほめられた子どもは成績を伸ばす。

・「勉強しなさい」に効果はない。お手軽なものに効果はない、「勉強をみる」などの手間暇のかかるものの方が効果あり。

・教育にお金をかけたとき一番効果のある(将来的に収入が高くなる)のは幼児教育。

・幼児教育が大切なのは「非認知能力」育成のため。

・「やり抜く力」を持つためには「心の持ちよう」が大切。「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなく、努力によって後天的に伸ばすことができる」ということを信じる子どもは「やり抜く力」が強いことが分かっている。

・少人数学級に効果はあるが費用対効果が低い。貧困層にはより効果がある。

あとは、教員についてや教育政策について。

著者紹介

中室 牧子

1998年慶應義塾大学卒業。米ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任し、現在に至る。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」。

『「学力」の経済学』を読もうと思ったきっかけ

エビデンスに基づく教育(Evidence-based Education:通称”EBE“)について調べていたらエビデンスに基づく教育研究会なるものが検索にヒットして、そこで紹介されてました。

いつも通りAmazonで購入しようかなと思ったらなんと”Prime reading“の対象!

アマプラ加入してるので無料で読めちゃいました。ビックリです。アマプラ入ってる人は是非読んでくれ。

医者が「こうしたら治るんじゃね?」と医学ではなく個人の経験から治療を行ったら嫌というか、「そこは医学に基づいて治療してくれよ」って思いますよね。

でも、ほとんどの(日本の)教師は「こうしたら良いんじゃね?」と個人の経験から教育を行っています。そこにエビデンスはありません。

学校内ではスマホを禁止するべきか?
禁止するべきだと”思う”
禁止しなくてもいいと”思う”
何となくそう思うから、経験、直感、好み。このレベルでしか議論されません…。

まぁ、そもそも教育にエビデンスというのが難しいので仕方のない部分はあります。

そもそも、何をもって良い教育というのかは時代や価値観によって大きく異なりますし。

『「学力」の経済学』では将来的な収入や学力で評価をしていましたが、それが正しい基準なのかは目的や価値観によって異なります。まぁ、一つの視点としてハッキリしているので個人の感想とは比べ物にならないくらい良いです。

とは言っても、今分かっているエビデンスを、たとえ条件付きだとしても知っておくことに越したことはないだろうと思い読みました、ということです。

『「学力」の経済学』から学んだこと

少人数学級に効果はあるが費用対効果が低い。貧困層にはより効果がある。

これかなぁ。

アメリカ・テネシー州で行われたSTARプロジェクトについては教員という仕事をしているので当然知っていたというか、教育に関する大きなエビデンスとして一番有名というか、これより大きい実験も無いし少人数教育に良い効果があることを信じて疑うことは無いみたいな状況だったのですが、費用対効果としてみたときに効果が小さいのではというのは考えてなかったです。言われてみたら当然の疑問なのに。

後は、ジェームズ・J・ヘックマンの『幼児教育の経済学』の影響を強く受けているということ。

後のことはまぁ、よく言われてることなので特に新しい発見とかは無かったかなぁ。

感想

何をもってエビデンスとするか、その点が難しいと思いました。

『「学力」の経済学』では主にランダム化比較試験で行われている実験をエビデンスとして紹介しており、それはエビデンスとして間違いないのですが、複数の研究で似たような報告がされないと(要は、メタアナリシスがないと)強力なエビデンスとまでは言えないんじゃないかなと思います。

捻くれた視点で見ると、自分の理論に都合の良いものをもってきて「エビデンス」と言っている、という風にも見えちゃいます。

エビデンスというくらいなら、別の組織が行った似た目的の実験を複数用意して、しかも全部ランダム化比較試験を行ってて、かつ、実験対象も色んな国や人種にしてくれないと中途半端じゃないのかなって思っちゃいますよね。

例えば、”ご褒美は子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせない”に関してとか、「そういう研究もあります」程度で済ませちゃってて、検証が足りないというか意見浅すぎるだろってなりました。誤魔化された感じします。

まぁ、そこが難しいから教育にエビデンスという概念が全然持ち込まれないんですけどね。

『「学力」の経済学』を含めて、色々な本で共通して言われていることが大切である可能性が高いと思うことにします。

非認知能力、幼児教育、報酬を与えるならアウトプットよりインプットに。ここら辺が、今まで読んできた本に共通して書かれていることです。

というか、ノーベル賞を受賞した『幼児教育の経済学』の著者でもあるジェームズ・J・ヘックマンの影響を受けた本ばかり読んでいる気がする。

流石にそろそろ読むか、『幼児教育の経済学』。

「学力」の経済学

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