デザイナーベビーは何が悪いのか?優生思想などの倫理的問題点とメリット

デザイナーベビーは何が悪いのか?優生思想などの倫理的問題点とメリット
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デザイナーベビーとは、受精卵を遺伝子操作(ゲノム編集)をすることで、生まれてくる子の外見・体力・知力・病気への耐性を操作することです。

中国が受精卵をゲノム編集してHIVに耐性のある子供を作ったとしてニュースにもなりました。

中国は、世界で初めてゲノムを編集した赤ちゃんを作り出したと主張している中国・南方科技大学の賀建奎准教授について、自らの名声と富のために違法なゲノム編集を行ったと批判した。中国国営メディアが21日に報じた。

賀准教授はまた、ヒト胚の遺伝子情報を書き換えを行うために、安全性が担保されていない技術を用いたとされている。

調査当局は、准教授がゲノム編集実験に参加する8組のカップルを募り、結果的に、2人が妊娠したと公表した。
「ルル」と「ナナ」と呼ばれる双子は昨年11月に誕生し、現在は医師の管理化に置かれているという。

中国「世界初のゲノム編集赤ちゃん」 双子の誕生と、別の女性の妊娠を確認

デザイナーベビーという言葉は、近年の医学の進歩と遺伝子操作技術の発展に伴い注目を集めています。

未来の子供の遺伝子を意図的・選択的に変更し、外見・体力・知力・病気への耐性を持つ子供を作り出すことは良いことなのでしょうか?

「人類の進歩、新しい形だ」

「倫理的にどう考えても許されることではない」

「それで子供が健康になるなら良い」

「安全性はどうなんだ?デザイナーベビーのさらに子供は?」

など、様々な意見や考え方、主張が存在しています。

今回は、デザイナーベビーについての倫理的な問題点とメリットに焦点を当て、その複雑な問題について考察してみたいと思います。

子供を「デザイン」することは許されることなのでしょうか?

デザイナーベビーの問題点 何が悪いのか

様々な意見のあるデザイナーベビーですが、一体何が悪いのでしょうか?

問題点をピックアップして一つ一つ考えていきたいと思います。

安全性の問題

まず、最大の問題点は安全性の問題です。

受精卵のゲノムを編集して赤ちゃんを作るなんて、本当に安全なの?

という直感的な疑問が生まれるのは当然ですね。

現時点の技術では安全性は十分に確保されておらず、生まれた赤ちゃんが安全かどうかは分かりません。

ただ、遺伝子組換えと比較するとゲノム編集は安全性が高く、植物や魚では品種改良に使われています。農業、漁業、畜産では古くから品種改良がおこなわれていたため、農業、漁業、畜産ではゲノム編集も世界的に受け入れやすい傾向にありますね。

植物や魚の例を見る限り、理論的に完全に安全が確保されることはありませんが、実質的にほとんど問題は無いという状態になる可能性は十分にあります。

それでも、今までの歴史から、人間という点である時点で少しでも安全性に問題がある限り許容されるものにはならないでしょう。

技術を完成させるまでに発生する問題

新しい技術やイノベーションを作るうえで問題は必ずどこかで発生します。

例えば、トウモロコシの場合は遺伝子組換えやゲノム編集に失敗しても大きな問題になりません。トライ&エラーの精神でも大丈夫でしょう。

しかし、赤ちゃんの場合はどうでしょうか。

現在、受精卵をゲノム編集することは認められていますが、ゲノム編集した受精卵を着床することは認められていません。

デザイナーベビーを作るためには安全性が必須です。しかし、受精卵をゲノム編集して理論上問題なかったとしても、実際に運用しないと安全性は分かりません。

通常、新薬の開発等では治験という形で本人の自由意志のもと臨床試験を行うことができますが、新しい赤ちゃんを作るという臨床試験はどう行うのでしょうか?

という問題があるのです。

社会格差が生まれる

現在、全世界の1歳児の内、何かしらの予防接種を受けている人の割合は80%以上です。

しかし、デザイナーベビーが実用化された場合、一体何%の人がデザインできるようになるのでしょうか。

デザイナーベビーの議論では「技術が完成し無料で100%行うことができる」と仮定して議論を行うことがありますが、その仮定に疑問があるわけです。

これは想像でしかありませんが、一部の立場にある人や、高いお金払うことでしかデザイナーベビーを作ることはできない環境になるのではないでしょうか。

少なくとも、1歳児の予防接種率ですら80%である以上、受精卵をデザインする人の割合はもっと低いと予想されます。

病気への耐性ならまだしも、高い体力・知力・魅力的な外見を一部の人だけが生み出せるようになったら、極端な話、知力にゲノム編集ブーストかけた人じゃないと入れませんなんて組織が将来的にできる可能性もあり得ますよね。

ゲノム編集の技術的にも、知力より体力(筋肉量)などを操作する方が簡単なので、スポーツの世界なんてもっと顕著に影響が出ます。

体力をゲノム編集で伸ばした人が世界記録を更新しまくる世界が来る可能性は十分現実的です。

ゲノム編集した人じゃないと活躍しにくい社会が待っているかもしれないですよね。

デザイナーベビー肯定派は、この問題に対する明確なアンサーを用意する必要があるでしょう。

実際、ゲノム編集されているトウモロコシと普通のトウモロコシのどちらが使われているのかって話ですよ。100%格差は生まれるでしょうね。

宗教的な倫理問題

キリスト教のような一神教の宗教では、「生命は尊いもので、人間の誕生の部分には人が立ち入ることができない尊厳がある」という考え方があります。

特に、人間は神が創ったものなので人間の設計図に踏み入れてはいけないという「倫理観」です。

自然がどういう仕組みなのか分からない時代、自然は神の領域でした。

神の領域は不可侵であり、それ自体に触れることが問題です。

このような生物に対する絶対的な考えは論理的に導かれるものではありません。

しかし、世界の人口の3割強がキリスト教の信者です。人口の3割もの人が信じている宗教の考えに反することを行って問題がないと言えるのでしょうか。

例えデザイナーベビーが合理的に正しかったとしても、心情的に大きな拒否感が生まれることが大問題になり得るのです。

不自然なこと

人間の受精卵を意図的に操作することは自然に反することだから問題だという意見もありますが、「自然だから良い」は全てのものに通じる理屈ではありません。

例えば、抗生物質を使って治療をすることって不自然です。

なぜなら、抗生物質は細菌を排除するためのものですが、大量に生産して意図的に使用することが自然とは言い難いからですね。

また、美味しい野菜・果物を意図的に育てて食料を確保するなんてことを1万年前から行っていますが、不自然だから良くないなんてことにはなりませんよね。

美味しいものと美味しいものを交配してより美味しいものを作る。不自然なことですが、不自然だから良くないとはなりません。

自然なことが良いとも言えないですし不自然だから良いとも言えない、中間のような価値があるのではないでしょうか。

優生思想に関する問題

デザイナーベビー肯定派の意見は「赤ちゃんの何かしらの能力が上げることは良いことだ」という考えがあります。

能力のある人が多く生まれるべき、能力のない人は生まれないべきという優生思想に陥っているんですよね。

優秀なトウモロコシを作ったり優秀な馬を生み出すのと同じで、人間も品種改良していいだろって考えになってるんです。

本気で「能力のない人は生まれない方が良い。植物や他の動物では行ってるんだから人間も良いだろ。」って思ってるみたいです。

人間の能力で優劣を付けるのは良いです。能力といっても様々ですし、色々な視点や指標から能力の優劣を付けることは日常的に行われていることです。(その優劣は時代や価値観によって変化するものですが)

しかし、ある特定の能力だけを見て「生まれて来るべき・生まれてこないべき」と言うのはどうなのでしょうか。多岐にわたる能力の中から、本当にその能力だけをみて生まれてくるべきかどうかを判断できるものなのでしょうか。

何を良いとして何を悪いとするか、その判断基準は何か、それは時代を超えて普遍的なものなのか、正しい判断なのか…。

優生思想に関する細かい議論は別に行うとして、デザイナーベビーには優生思想の問題を含んでいるわけですね。

後、優生思想が正しかったとしても、「体力・知力・外見を編集して優れた赤ちゃん同士で優劣が決まるだけで本質的には変わらない」だけではないでしょうか。

優劣を決めて子供を作っても、新しい価値観が生まれて優劣の基準が変わるだけでだと予測することもできますよね。

デザイナーベビー賛成派の考え メリットは何か

デザイナーベビーの賛成派の意見は何でしょうか?

メリットというと変かもしれませんが、デザイナーベビー賛成派が良いと思っている部分をまとめます。

不幸になる確率が減る

「もっと体力があれば」
「もっと頭が良ければ」
「もっと顔が良ければ」

もっと能力があればもっと幸せになっているのに(もしくは、こんな不幸になっていないのに)という想いがデザイナーベビーを推している人の最大の意見なのではないでしょうか。

平たく言えば、「自分が今から受精卵に戻れるなら、デザインしてから生んでほしいと親に頼んでる」という気持ちがあるのでしょう。

親ガチャという言葉もあるように、もっと良い遺伝子を持った親から生まれたかったという気持ちですね。

少なくとも、デザイナーベビー反対派はこの問に対してハッキリと論理的にも感情的にも回答をしないといけないかもしれませんね。

もっと良い遺伝子を持って生まれたかった。そうすればもっと何かできたはずだ。

という気持ちに応えてあげるべきです。

そもそも「結婚相手を選ぶ段階で遺伝子を選別している」のだから、デザインするくらい別にいいだろとも思ってますね。

自分の知らぬ内に優生思想に取りつかれていて、他の人も皆同じことを考えてるって思っているのだと思います。

能力の低い人は生まれても不幸になる確率が高い、能力を底上げした状態で生まれれば不幸になる確率が減るんだ。

という意見が、デザイナーベビー賛成派の根底だと思われます。

意図的に強化された人間を作ることが可能なのは人間の進化だ

ゲノム編集によって高能力の人間が生み出せるようになることは、単純に人類の技術の進歩であり「人間の進化だ」とも言えるのではないでしょうか。

今までできなかったことができるようになるだけじゃないですか?

AIを使って絵や文章を作成できるのと同じで、子供の可能性が増えるだけですよ。

人類は今まで新たな技術を発見することで発展してきたのだから、これも同じで、新しい技術から新しい時代に変わるだけなんだ。

という意見ですね。

する”べき”、しない”べき”のようなべき論ではなく、どんなことをしようがそれが人類なんだというある意味前向きな立場です。

そのために人権を無視していいのかと言われたら否ですが、人権を無視しない範囲の方法もあるんじゃないかと新しい考え方を探すのも良い考えの一つだと思います。

まとめ

デザイナーベビーはゲノム編集を行うことで赤ちゃんの特性を操作する技術で、様々な議論が起きています。

デザイナーベビー賛成派の意見は、不幸になりやすい(と考えている)遺伝子疾患を減らしたり、能力を向上して幸せになりやすくしたりするのは道徳的だという意見です。

一方、デザイナーベビー反対派の意見は、安全性・倫理・社会格差・宗教的観点・優生思想・自然性の問題があるということです。

デザイナーベビーをどれだけ理論で考えたとして、たとえ理論が正しかったとしても全ての人が受け入れるべきというわけではありません。

複雑な議論なので、多くの人がデザイナーベビーについて知りもっと議論を行うべきだと思います。

デザイナーベビーで人間を良くするかどうかしか議論されてないですが、敢えて人類史上最悪の人間を生み出すことも技術的には可能なのだとしたら怖いですよね
自分の人生は親にデザインしてもらうのではなく、自分でデザインしよう!

 

デザイナーベビーは何が悪いのか?優生思想などの倫理的問題点とメリット

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