『実践理性批判』でカントと道徳について学ぼう

実践理性批判
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こんにちは!かいしーです!

かいしー読書部では、私が読んだ本を紹介していきます!

勉強したい、良い知識を身に付けたいという想いから選んだ本を紹介!

今回紹介するのは、『実践理性批判』です!

実践理性批判

近代哲学の祖と呼ばれるドイツの哲学者カント(1724-1804)。

カントと言ってすぐ思い付くのが「義務論」。

道徳や倫理に詳しくなりたいなら「義務論」を知るのは必須だと思い、『実践理性批判』を読むことにしました。

最初はそのまま読んでたのですが、そのまま読むには時間がかかること・解釈が合っているか不安なことから途中で解説書も買いました。

解説書がなかったら2倍以上読むのに時間かかっただろうなと思います。

哲学書に慣れないうちは補助輪を付けて読まないと難しいですね。

『実践理性批判』|内容・著者紹介

内容

人間は何が善であり何が悪であるかを理性の能力によって必ず判断することができる。

ニュートンが万有引力の法則を見つけたように、道徳にも普遍的な法則があるはずだ。

ある特定の個人にとって良いものが「善い」のではなく、全ての人にとって共通する「善い」が「普遍的立法」だ。

最も徳のある人が最も大きな幸福に値する。

「遺産が欲しいから親に優しくするべき。」のように、その人に(一部の人に)しか当てはまらないようなものを仮言命法、「親に優しくするべき。」のように全ての人に当てはまるものを定言命法と言い、それが道徳だ。

「~~だから、~~する。」の「~~だから」の部分がなくても理性的に考えて正しいと思えることが道徳で、道徳を実践するという命令に従わなければいけない。

みたいな感じですかね?

読み間違ってたら悲しいです。

著者紹介

カント。それが全て。哲学で一番有名で一番重要な人。

岩波書店は 「波多野 精一 訳 , 宮本 和吉 訳 , 篠田 英雄 訳」です。

『実践理性批判』を読もうと思ったきっかけ

倫理・道徳に詳しくなりたい。

何が正しくて何が正しくないのか、善悪とは何かについて勉強したい。理解したい。

堂々と胸を張って「良い」と言える人になりたい。

道徳・倫理を学ぶ上でカントを避けて通ることはできないので、カントの『実践理性批判』を読むことにしました。

『実践理性批判』から学んだこと

道徳は子供でも判断できる

『実践理性批判』では、道徳は理性があれば誰でも理解できるという前提で話していて、その例として以下のようなものが語られています。

それにはまず十歳の男児に一つの実例を与えて判定させると想定したうえで、彼がこれについて教師の指図を受けなくても、自分から進んで必ずこの規定通りに判断するかどうか調べてみたい。彼に一人の正直な人の話を聞かせるとしよう、--腹黒い人達は、この正直な人の心を動かして、罪を犯していないということよりほかには、財産らしい物を何ひとつもたないような哀れな人物(例えば、イングランド王ヘンリ八世によって誣告されたアンリ・ブリンのような)を誹謗中傷する輩の仲間に引き入れようとする。彼等は、この人に立派な贈物や高い官位のような利得を提供する、だが彼はこれを拒否する。こういう話を聞いただけでは、聞き手の[少年の]心(Seele)に称讃と同意とを生ぜしめるにすぎないだろう、この人が拒んだのは、利得だけだからである。そこでこれらの誹謗者たちは、[こちらの意志に従わなければ]ひどい目にあわせると言って威し始める。彼等のなかにはこの人の親友もいて、彼に絶交を宣言する、また近親者たちもいて、彼の相続権(彼には財産がないから)を剥奪すると言って威す、また権力者たちもいて、たとえ彼がどんな所にいようとも、またどんな境遇にあろうとも、彼を追求して苦しめることができる、更にまた領主もいて、彼の自由を奪い、それどころか生命をさえ奪うと言って威嚇する。だがそればかりでなく、苦悩の枡目が一杯になるように、道徳的に善なる心だけが痛切に感じることのできるほどの苦痛をすら彼に嘗めさせるために、極度の窮迫と欠乏とに脅かされてきる彼の家族が彼に屈服を懇願している、と話してもよい。また彼自身とても、なるほど誠実ではあるがしかし家族の苦しみに共感し、また自分自身の困苦を感じる器官は、決して木石のように非情なものではない。彼は、生きながらえてかかる言語道断な憂き目を見る日にめぐり合わねばよかったのにと思う瞬間にも、泰然として動じることなく、また自分の行為[の正しさ]に対していささかの疑念もさしはさむことなく、ひたすら誠実な志操を守りぬく様子を話して聞かせるとしよう。するのこの話を聞いた少年の心は、単なる同意から感嘆へ、感嘆から驚嘆へ、ついには最大の敬慕に高まり、自分もこのような人物になることができたら(もちろん話題の人のような境遇ではないにせよ)という潑剌とした願望を懐くようになるであろう。

長いので要約します!

10歳の少年にある話を聞かせてみよう。

ある正直者に誣告を(嘘の証言を)させるために、腹黒い権力者達が官位などを条件にして引き入れようとする。

もし引き受けないのであれば、自由を奪い、力で命を脅し、財産も奪うと言い、正直者の家族は屈服してくれと願っているとも伝える。もちろん、この正直者は非情な人ではない。

にもかかわらず、この正直者は道徳性による自らの主義を貫き通した。

これを聞いた少年の心は、単なる同意から感嘆へ、感嘆から驚嘆へ、ついには最大の敬慕になり、このような人になりたいという(境遇は別)願望が出るだろう。

つまり、道徳とは自分の幸福や自愛的なものとは別物だということ。

もちろん、幸福を求めることが道徳に従うことと一致することもありますが、一致することもあれば一致しないこともある、お互いに独立してるものなんだということが分かりますね。

ここで言いたいのは、10歳の少年でも道徳が何かを感じ取れるくらい先天的に人間には道徳が何かを判断できる能力が備わっているというわけではありません。

世の中のことをほとんど何も知らない10歳の少年でさえ、道徳の本質が何かを判断できるのではないでしょうか?

ということです。

もちろん、この例にあるような極限状態で道徳的判断ができるかどうかは別の話ですけどね。

仮言命法と定言命法

最初にも言いましたが、カントと言えば「義務論」です。

義務論を簡単に言うと、道徳とは義務を守るということ。

自分のために・利己的な感情のために行動するのではなく、道徳的法則に従おうというのが義務論です。

そこで、自分のための行動なのか、それとも利他的で道徳的法則に従った行動なのかを判断する方法が、「仮言命法」と「定言命法」になります。

仮言命法

「〜〜したいなら、〜〜せよ」という形で表される命令。

例えば、「モテたいなら、優しい人間になるべし。」のようなものが仮言命法。

仮言命法は「利己的な」ものです。

モテたいのはその人の考えであって、全ての人が同じという訳ではないですよね。

「モテたいなら、優しい人間になるべし」という命令は貴方には当てはまるかもしれませんが、全人類に当てはまるわけではありません。

定言命法

「〜〜せよ」と無条件での命令。

「〜〜したいなら、」の部分が一切無いものが定言命法。

 

(例)

「人の物を盗むな」
「家族を大切にせよ」
「仲間を大切にしろ」
「約束は守れ」
「受けた恩にはきちんと感謝せよ」
「常に公平であれ」
「勇敢に生きよ」

このように、「〜〜しないなら、」という条件無しに、無条件に命令するものが定言命法です。

ここで、「友達に嫌われたくないなら、人の物を盗むな」という考え方をした場合、結果的に道徳的な行いをしてることになりますが、道徳的法則に従ったわけではないということになります。

人のものを盗んではならないのは友達に嫌われたくないからの場合もあるかもしれませんが、そもそも「人の物は盗んではいけない」ってことは知性があれば分かりますよね?

それが道徳なんです。

つまり、何が正しいのか理性があれば判断できるんだから、自分の行動が常に道徳的法則に従うように行動しなさい。ってことなんです。

道徳があるから自由がある

道徳があるから自由があるんだという考え方があります。

人間はもちろん欲望を持っているため、欲望を満たすために行動をしますよね。

もし、人間の全ての行動が欲望を満たすためのものだとしたら、つまり、道徳とは欲望・幸福と関連のあるものであれば、人間に自由意志はないと言うのです。

なぜなら、欲望を満たすためにしか行動しないとしたら、人間の行動って一択だけになってしまうじゃないですか。

お金が落ちてる、欲しい、拾おう。

これで終了ですよね。欲望満たしました、終わり。

お金が落ちてる、でも拾うと周りから嫌われるのは嫌だ、やめとこう。

これも、欲望と欲望が対立してますが、より強い欲望を優先しただけで自由はありません。より強い欲望に従っただけです。一択です。

しかし、道徳があればどうでしょうか?

お金が落ちてる、欲しい、でも拾うべきでは無い、どうしよう。

っていう「悩み」が生じますよね。

「欲望」を優先するか「道徳」を優先するか、悩みが生じることで行動に選択肢が生まれます。

何が道徳的に正しいことなのか理解できる理性(10歳の子供でもできる)があれば、私たちは正しいことをするかしないか選ぶことのできる「自由」を行使できると言えるのではないでしょうか。

つまり、何が正しいのか分かっていれば、正しい行動をしようかしないか悩むことができて、悩んで行動を選んでいるのが「自由」なことだってことです。

感想

道徳って睡眠に似てる?

「道徳とは何か?」を考える難しさって「睡眠とは何か?」を考えるのと同じくらい難しいなって思いました。

睡眠とは何かを明確にきちんと説明できる人って、多分誰もいません。

せいぜいレム睡眠やノンレム睡眠くらいの単語を知っている程度。「睡眠は脳の休息」とは言うものの、脳が本当に休んでいるのかどうかすら分かってないでしょう。

睡眠の効果を完璧に説明できたとしても、その効果を発揮するためになぜ眠る必要があるのかというのは非常に難しい話です。

しかし、私たちは睡眠が何なのか、睡眠によって何が起こってるのかを何となく理解しています。

睡眠を取ると、昨日は分からなかったこと・思い付かなかったことが分かる・思い付くようになるとか、記憶が整理されるとか。

睡眠自体が何なのか完璧に理解できなかったとしても、睡眠の本質は理解できている。

道徳が何なのか理解できていなくても、道徳的な判断はできる。

似たようなものなのかなって思いました。

道徳は利他的なもの

人類共通の道徳が何かをハッキリ説明することはできませんが、道徳とは「利他的なものである」と多くの人がなんとなく理解できています。

例えば、目の前に100万円が落ちてたとして、それを自分の物にしてしまう行為は「自分の得になる」という意味で自分の中では善でしょうが、それはあくまでもその人限定の話であり、「目の前に落ちてた100万円を自分のものにした」というエピソードを聞かされたとき、多くの人は「道徳に反している」と感じるでしょう。

誰しもが似たような感覚を持っているならば、リンゴが地面に落ち、平面上の三角形の内角の和が180°になるように、道徳には道徳の法則が存在しているのではないかという発想になるのも分かるなって思いました。

道徳は誰にでも判断できるのか?

冷静に考えれば、自分の行いが道徳的か道徳的でないかを判断することは私には可能です。

「今日一日、人に対して優しくできたか?」

という質問をされ、自分の一日を振り返ることができれば、それぞれの行動に対して「これは優しい」「これは優しくない」と判断できるはずだと認識しています。

アニメや映画を観て、登場人物の行動が優しいか優しくないか、道徳的か道徳的じゃないかって何となく分かりますよね?

自分の行いを自分で見ることができるのであれば、もっと簡単に分かるはずです。

十歳の少年でさえ分かるのだから、大体の人は分かるだろうということですね。

ただ、どうしても運動神経が悪くてスポーツが下手な人がいたり音痴だったり絵が下手だったりする人がいるの同じで、人間ってどうしようもなく頭が使えなくて頑張っても頑張っても理性が身につかない人もいるので、どうしても理性的なことが分からず道徳が分からない人もいるのではないでしょうか。

人間が皆、カントの言う通りに理性を持ち道徳的法則を実践できれば良いのですが、そんなの理想的な世界過ぎるだろって思いましたね。

判断が難しい道徳もある

何が道徳的に正しくて何が道徳的に正しくないか、簡単な場合と難しい場合があると思うんですよね。

そりゃ、人を騙すとか盗むとか親を殺すとか、そういうのがほぼ無条件的に道徳に反してるのは分かりますよ子供でも。

でも例えば、「死刑」とかはどうでしょうか?

「どんなことがあっても人を殺すのはダメだよね死刑は良くない」という判断もできますが、「死刑には治安維持・犯罪防止効果があって、犯罪を防止することは良いことだよね」とも考えられるわけです。日本の死刑が本当に犯罪防止効果があるかはさておき。

要は、判断が難しい場合、複数の道徳が対立する場合もあるのではないでしょうか。

それこそ、親と恋人、片方だけ助けられるとしたらどっちを助ける?
みたいな問題とか。

どういう選択が道徳的なのか、意見は分かれると思います。

道徳を守るのが厳しい場合もある

あと、道徳を守るのは現実的に厳しい面もあると思います。

環境破壊は良くないよねと言いながらパーム油を使用してる商品を購入しますし、火力発電や車・電車に頼ってます。

これって、道徳的法則に従う行動ではなく自分の利益を優先した行動ですよね。

カントの道徳的法則に従うのであれば、環境破壊によって得られる恩恵にあやかるのは良くないことですが、実際には皆恩恵を受けています。

あくまでも道徳的かどうかを判断する1つの方法、考え方であって、道徳に全て従えってわけではないというか、道徳に全て従うのは無理です。

せいぜい自分の行動を見返して、何個か道徳的な行動を増やしていこうかなと思う程度ですね。

道徳的法則に従い続けてたら生きていけないので、可能な限り、自分の意思や行動と道徳的法則が一致するようにしていきます。

実践理性批判

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