キャンセル・カルチャーで考える正義と悪

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社会が潔癖症になっている。

“男性の匂い”をめぐる投稿で炎上したフリーアナウンサーの川口ゆり(29)。8月13日、彼女のパートナーを名乗る男性が、Xで川口アナの現状について報告し、ネット上では心配する声が上がっている。
《「川口ゆり」のパートナー》とXのプロフィールで名乗るのは、株式会社ガイアックスの管理本部長を務める流拓巳氏。川口アナに関する《悪質な虚偽の内容》がネット上で拡散されていると具体例を挙げて指摘し、誹謗中傷やデマに警鐘を鳴らした。
問題視された川口アナの8日のポストは《ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど》と前置きした上で、《夏場の男性の匂いや不摂生してる方特有の体臭が苦手すぎる。常に清潔な状態でいたいので1日数回シャワー、汗拭きシート、制汗剤においては一年中使うのだけど、多くの男性がそれくらいであってほしい…》(現在は削除済み)というもの。
投稿は賛否両論を巻き起こし、11日に川口アナの所属事務所は《異性の名誉を毀損する不適切な投稿行為》として、契約解消を発表する事態にまで発展した。

https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2360905/

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川口ゆりアナウンサーは、SNS上で「夏場の男性の匂いや不摂生している方特有の体臭が苦手すぎる」と投稿し、これが性差別的であるとの批判を受けました。

その結果、所属事務所から「異性の名誉を毀損する不適切な投稿行為」として契約解除されました。

・不倫をしたことで活動停止に追い込まれたアンジャッシュ渡部氏

・1994年と1995年のインタビューでいじめ行為を行ったと答えたことを掘り起こされ、東京オリンピックの演出から解任された小山田圭吾氏

・鍵アカでフェミニズム研究者の女性を誹謗中傷していたことが判明し、NHKの大河ドラマの歴史考証役を降板。停職一か月の懲戒処分を受けた歴史学者の呉座勇一氏

・170cm以下の男性に人権ない発言のたぬかな氏

・やす子オリンピックに対する不適切な書き込みで芸能活動休止になったフワちゃん

・ジャニーズ問題

その他諸々。

ここまで徹底的に叩かれる必要はあったのでしょうか?

地位や仕事を失うほど重大なことだったのでしょうか?

キャンセル・カルチャーとは何か、世の中は一体どうなってしまったのかについて個人の主観で解説をしていきたいと思います。

キャンセル・カルチャーとは

キャンセル・カルチャーとは、著名人や公人、または企業などが、過去または現在の不適切な言動や行動を理由に公衆からの批判やボイコットを受ける社会的現象を指します。

例えば、川口ゆりアナウンサーは”男性の”体臭を批判することが差別的であるとされ、契約解除(キャンセル)されてしました。

このように、特定の発言や行動が”不適切”であるが故に反論の余地なく一方的に攻撃され、社会的立場を失うことになるようなものがキャンセル・カルチャーです。

キャンセル・カルチャーは攻撃の手段?

現在SNS上で見られるキャンセル・カルチャーは「人を攻撃するための手段」として使われていると私は感じます。

日本企業のほとんどは”事なかれ主義”であり、少しでもリスクがあると考えられる人物は即座に契約解除させられるのが現状です。

特に、正社員のように簡単にクビにできないような立場ではない人は簡単に切り捨てられてしまうため、日本企業の事なかれ主義とポリコレを利用して、人が落ちぶれる様を見て楽しむ娯楽の手段となっているのではないでしょうか。

自分の生活に満足していない、SNSを見るのに忙しい”退屈な”人から見ると、芸能人やミュージシャン、学者のような人たちは憎しみの対象です。

自分の生活はうまくいってない状態で人生を楽しんでいる人を見ると憎くて憎くて仕方がない、”気に食わない”と感じるようになります。

憎しみが抑えきれなくなると、匿名で活動できるSNSを利用して、相手の粗を探し炎上させることで企業に契約解除させるよう強要し始めます。ほとんどは大きな炎上を起こすことなく消える小さな炎ですが、稀に多くの人を巻き込むくらいの大きな炎になることがあるのです。

立場が上の人を屈服させることで自分が強くなったかのように錯覚して快感を得る行為がキャンセル・カルチャーが盛り上がっている理由なのではないでしょうか。

中には、本気で「悪いことが許せない」と感じている正義の戦士もいます。そういう戦士は「世の中を良くするためには誰かの非を指摘し攻撃するしかない」という理念の元、自分の考えにそぐわない・自分に不快な思いをさせるような悪を殲滅するために戦い続けます。

フワちゃんは確かに不適切な書き込みを行いましたし、普段の素行も気に入られるものではないかもしれません。

しかし、だからといってフワちゃんを叩くことは正しい行いだと勘違いしてはいけません。テラスハウスの木村花さんが気に入らないからといって叩いて良い理由にはならないのと同じで、あなたに直接被害を与えたわけではなにのにも関わらず、ただ不快なだけで攻撃するなんてことは理性的な大人が行う行為ではないのです。

世界中の誰もが不快にならない言葉なんてものは存在しないのですから。

過去の罪は一生許されないのか?

キャンセル・カルチャーで恐ろしいのは「過去の発言を利用して叩く行為」です。

小山田圭吾氏が叩かれる原因となったのは1994年と1995年のインタビューというかなり前の発言。

現在、インターネットで様々な人が情報を残し続けています。昔と比べるとテレビやラジオもデータベース化されアクセスしやすい環境になっているのは間違いありません。

今のインターネット上での発言を数十年後に掘り起こされて叩かれる可能性があるというのは非常に怖いことなのではないでしょうか。

特に、価値観は時代とともに移り変わっていくものなので、今は悪いとされていないことでも未来からみたら悪いものになっているかもしれません。

例えば2025年の今、牛や鶏を遺伝子改変させることで効率よく肉を生産していますし、トウモロコシのようなゲノム編集された植物も活用しています。

私が今ここで遺伝子改変やゲノム編集が素晴らしいものだと語ったとして、2055年くらいに「この人は過去にこんな発言をしていた」と取り上げられて叩かれる可能性があるということなのでしょうか?

過去の発言を見る際は今の価値観ではなく当時の価値観を考えることが非常に大切なことなのではないかと思います。

目立たず生きていくしかない

言論の自由は制限されました。

もう、原理的に自由な発言をして良い世の中ではありません。

SNS上の全ての発言は記録され、日常的な会話も録音されている可能性があります。
(中にはTelegramのような秘匿性の高いSNSも存在しますが。)

私たちは、日常における全ての発言において「特定の属性を持つ人を傷付けない」「倫理や道徳に反すること」を行ってはいけません。

なぜなら、SNSを見るのに忙しくて退屈な正義の戦士たちが、「誰か叩いても良い人はいないか」と目を光らせて探しており、少しでも集団心理における”正義”から外れた”不快な発言・行い”をした人は集中砲火され反論の機会なしにキャンセルされるからです。

特に、社会的にある程度成功しており、地位を持つ人は特に気を付けなければなりません。

社会的に成功している人・恵まれている人は社会に不満を持った悪意と嫉妬の塊の標的です。

美しい女性が悪意ある根拠のない噂によって苦しんでいる姿を一度は見たことがありますよね。これと同じで、全ての人が悪意の標的となっているのが今の世の中です。

キャンセル・カルチャーの話題になると必ず「言論の自由」の話題が出てきますが、現実問題としてキャンセル・カルチャーが蔓延する世の中になっているので、理想を語る前に現実に対応しなければなりません。

「出る杭は打たれる」とよく言いますが、出る杭を打つ方法は「現在・過去全ての発言・行動を掘り起こし、一つでも汚点があればそれを利用して人格攻撃をすること」です。それが現実。

例え汚点が無かったとしても、根拠のない噂が流されたり、「何となく気に食わない」という悪意と悪意が同盟を組んだりするだけです。

これに対抗するためには「聖人」として振る舞うか、目立たないかのどちらかしか無いのではないでしょうか。(白黒思想)

ある程度社会的に成功している人は聖人として振る舞うか目立たないことで標的にならないようにする。

社会的に成功していない人は「気持ちを傷つけられない権利」を主張し安全なところから個人攻撃をしてスカッとする。

これが今の世の中における最も選択されている行動なのではないかと、残念ながら私はそう思います。

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