背理法というものをご存知でしょうか?
日本では高校1年生の数学1で習うので、高校生以上の人であれば皆さん聞いたことがあると思います。
無理数であることの証明や、整数と虚数の足し算は虚数であることの証明等によく使いますよね。
そんな背理法ですが、日常生活で変に使うと皮肉っぽくなってしまいます。
どうして背理法を日常生活で使うと皮肉になってしまうのでしょうか。
今回は、そもそも背理法とは何かについての説明と、日常生活での使用例を紹介していこうと思います。
背理法とは?
背理法とは「とある命題を証明するのに、命題が成り立たないと仮定すると矛盾が導かれること示すことで、命題が成り立つと証明する方法」
のことです。
上記の説明では分かりにくいので、背理法の数学での具体的な使用例を見ていきましょう。
\(\sqrt{2}\)が無理数であることを証明せよ
「\(\sqrt{2}\)が有理数である」と仮定すると、自然数m、nを用いて
$$\sqrt{2}=\frac{m}{n}…①$$
と表すことができます。このとき、\(\frac{m}{n}\)は約分できない既約分数であるとします。
①より、\(\sqrt{2}×n=m\)なので、両辺を2乗すると
$$2n^2=m^2…②$$
となり、\(m^2\)は2の倍数といえるので、mも2の倍数であるといえます。
ここで、mは2の倍数なので、m=2k (kは自然数)とすると、②より、
$$2n^2=4k^2\\
n^2=2k^2$$
となり、\(n^2\)は2の倍数になるので、nも2の倍数となります。
mとnの両方が2の倍数ということは、\(\frac{m}{n}\)は2で約分できることになるので、最初に\(\frac{m}{n}\)を既約分数としたことと矛盾してしまいます。
ゆえに、\(\sqrt{2}\)は有理数ではなく、無理数となります。
このように、
・\(\sqrt{2}\)が無理数であると証明したい
・もし\(\sqrt{2}\)が有理数であるとすると(\(\sqrt{2}\)が無理数ではないとすると)、矛盾が生じることを示す
・\(\sqrt{2}\)は無理数である
このような流れで証明することを背理法といいます。
実際に、日常生活でどのように使うと皮肉になってしまうのかを見ていきましょう。
背理法の日常生活の使用例と皮肉
背理法を以下のように日常生活で使うと、嫌味たっぷりの皮肉になってしまいます。
頭が悪い人を馬鹿にするとき
頭が悪い人を馬鹿にするとき
「君ってホント馬鹿だよね」
と直接言うと、皮肉にはなりませんが、
「君ってホント頭が良いよね!どんな問題でも解けるんじゃない?試しにこの問題を解いてみてよ!」
と言うことで、皮肉にすることができます。
「君は馬鹿」であることを示すために、「君は頭が良い」と仮定し、「問題を解けない」ことを暗に示すことで「君は馬鹿」であると伝えています。
まさしく背理法ですよね。
他の使用例も見ていきましょう。
遅刻した人に一言
遅刻した人に言ってみましょう。
「今日はいつもより早いですね」
遅刻したということは、いつもより遅く来たということなので、いつもより早いことと矛盾します。
これも背理法っぽい言い方ですよね。
「遅刻していない」と仮定し、「いつもより早いわけがない」ことを言うことで「遅刻している」ことを伝えています。
なお、いつも遅刻している人には意味ありません。
古い考え方に捕らわれている人へ
古い考え方に捕らわれており、役に立たない人に対する皮肉です。
「あなたの斬新なアイデアのおかげで、このプロジェクトも安泰だよ!」
「古い考え」を「斬新なアイデア」と仮定し、皮肉にしています。
しかし、背理法では「無理数」と「有理数」のように、きちんと反対のものとして仮定しなければいけません。
「古い考え」の裏は「斬新なアイデア」ではないため、背理法としては正しくなく、ただの詭弁になってしまいます。
あくまでも背理法っぽいだけですね。
どうして背理法が皮肉になるのか
皮肉の意味とは「相手の欠点や弱いところを遠まわしに言うこと」です。
背理法では「無理数」を「有理数」と仮定するように、相手の弱点や欠点を良いものと仮定することで遠回しな言い方になり、皮肉になります。
「君は頭がいいね」
「今日はいつもより早いね」
「斬新なアイデアだね」
実際は馬鹿にされているのにも関わらず、一見褒めているように見えるところがネチネチしていてズルいですよね。とぼけるなという感じです。
このように、
「相手の欠点や弱点」を「相手の良いところ」として仮定し、背理法のように伝えることで皮肉にすることができます。
当たり前の話ですが、皮肉屋は嫌われる存在なので、皮肉は言わないようにしましょうね。