最強の毒は何? 化学物質と毒

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最強の毒は何だと思いますか?
化学物質編です。

どういう毒があるのか、前回は有名な動物・植物の毒について紹介しました。
今回は化学物質編ということで、様々な毒を紹介したいと思います。

まずは、前回同様、LD\(_50\)についての説明から始めます。

LD\(_{50}\)(50%致死量)とは

LD50(50%致死量)とは、ある一定の条件下で動物に試験物質を投与したとき、動物の半数を死亡させる試験物質の量のことをいいます。
致死量といっても、年齢や健康状態によってその量は変化するため、ある程度の判断をするための基準が必要ですよね。

毒の種類について知る前に、まずはLD\(_{50}\)というものについて知ると、毒性の違いが分かりやすくなります。

LD50とは

例えば、LD\(_{50}\)=0.01mg/kgの場合、体重50kgの人に投与したら、0.01×50=0.5mgで半分の人は死ぬと予想されます。

単純に考えると、LD\(_{50}\)の値が小さければほど、少ない量で死に到る可能性が高いということです。

なお、人間で試しているわけではないため、ある程度の判断の基準として見ると良いでしょう。
また、LD\(_{50}\)の値は、どの動物で試したのか、どういう投与の方法なのか(経皮や吸入など)などによって違います。出典によっても細かい値が違う場合も多いため、あくまでも参考の値として見て頂ければと思います。

 

ヒ素

LD\(_{50}\)=15mg/kg

毒といえばこの物質、というくらい有名な毒なのではないでしょうか。
元素記号はAs。森永ヒ素ミルク事件、和歌山毒物カレー事件など、事件としても話題に上がることの多い物質です。

ヒ素の中でも、3価の無機ヒ素である亜ヒ酸を摂取した場合、臓器や神経にの障害が起き、死に到ります。
和歌山毒物カレー事件で使われたヒ素も亜ヒ酸であり、急性ヒ素中毒になった67人中、4人が死亡しています。
亜ヒ酸は無味無臭で水に溶けやすいため、食べ物に混ぜやすいです。

なお、自然界に広く存在する物質なので、私たちは日々、微量のヒ素を摂取していますが、微量であれば肝臓が分解してくれるので大丈夫です。

青酸カリ

LD\(_{50}\)=5~10mg/kg

正式名称はシアン化カリウム、化学式はKCN。
ミステリー系の小説やドラマにも登場する、毒殺として使われる有名な物質です。
青酸に青という字が使われているので、青いのではないかと思う人もいるかもしれませんが、実際は白い粉です。

シアン化合物は多くの化学工業の分野で使われているため、薬品がきちんと管理されていない時代・場所では比較的簡単に入手できる毒でした。

青酸カリが体内に入ると、胃の中で胃酸と反応し、青酸ガスが発生します。そして、細胞内のミトコンドリア中の酵素怖し、呼吸麻痺を引き起こします。

サリン

LD\(_{50}\)=0.5mg/kg

地下鉄サリン事件としてあまりにも有名なサリンは、第二次世界大戦中である1938年にナチスが開発されましたが、ドイツ軍が戦争で使うことはありませんでした。
サリンの名前は、開発者であった4人の名前からつけられています。

その製造法は当然機密なので、どんなに調べても出てくることはありませんが、敗戦国になったドイツから連合国側に伝わっているため、今でもどこかに製造法が保存されているはずです。
また、2017年にはシリアで使われたとされている等、未だに現役の化学兵器です。

サリンは毒ガスであり、吸収すると呼吸困難を引き起こして死にます。
呼吸だけではなく皮膚からも吸収してしまうので、ガスマスクだけでは防ぐことができません。

VXガス

LD\(_{50}\)=0.015mg/kg

VXもサリンと同じ神経ガスであり、人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質の1つです。
無味無臭であり、サリンと同様、呼吸だけではなく皮膚からも吸収してしまうため、ガスマスクだけでは防ぐことができません。
VXガスに触れると数分で神経系の活動が停止し、死に到るといわれています。

2017年2月13日、金正男がマレーシアのクアラルンプール国際空港で毒殺された事件も記憶に新しいですね。
また、オウム真理教はサリンだけでなくVXガスも製造しており、事件を引き起こしています。

ボツリヌストキシンA

LD\(_{50}\)=0.0000011mg/kg

ボツリヌストキシンは化学式はC6760H10447N1743O2010S32であり、分子量は約15万の高分子のタンパク質です。
LD\(_{50}\)=0.0000011mg/kgという値は、100gで15億人の60kgの人が50%が死ぬという値です。
LD\(_{50}\)という点で見れば、地球上で最強の毒素といっても過言ではありません。

ボツリヌス菌という細菌から産生される毒素であり、その神経毒は食中毒のような吐き気・運動神経の麻痺を引き起こし、最終的には呼吸困難になり死に到ります。

しかし、空気中では12時間以内、日光下では数時間で毒性を失い、熱や水にも弱いため、殺人兵器としての実用性は疑問視されています。

まとめ

LD\(_{50}\)という点で見れば、最強の毒はボツリヌストキシンAです。桁違いの強さ致死性を持っています。

しかし、兵器としての性能・使いやすさで見ればVXガスの方が上ですし、手に入りやすいという点ではヒ素や青酸カリの方が上です。

そもそもLD\(_{50}\)はただの目安に過ぎず、ラッドでの致死量と人間での致死量は違うかもしれません。
さらに、長時間にわたって少しずつ死に近づけるような毒はLD\(_{50}\)で表すことができないため、そういう面では他の毒の方が強いかもしれません。

要は、用途によって最強の毒は変わるということです。
LD\(_{50}\)という点で見れば、最強の毒はボツリヌストキシンAですね。

参考文献

今回参考にした本も、前回と同じ本です。

薬と毒の違いは何か?という内容で、毒の種類だけではなく、毒がどのような事件に使われたのかについても書いてある面白い本です。
前半が図鑑、後半が解説となっているため、子供から大人まで楽しめる内容になっています。

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