「宇宙旅行」という言葉は夢物語のように思われていましたが、実際に民間人でも宇宙に行く人が出始めており、少しずつ現実的なものとなってきました。
宇宙旅行といえば、無重力空間で宙に浮かびながら上のような景色を見る。
このようなことを想像している人が多いのではないでしょうか?
今回は、宇宙は無重力ではないことをお伝えしたいと思います。
宇宙旅行は地上何km地点?
宇宙旅行は地上何kmの高さまで行くのでしょうか?
そもそも、宇宙の高さは地上から約100kmです。
(高さ80kmからとしている国もあるため、大雑把に80km~100kmから宇宙と言えるでしょう。)
2021年9月 スペースXによる初の「民間人だけの宇宙旅行」では地上から約579km、2021年7月 ヴァージン創業者による宇宙旅行は地上から約85kmの高さまで到達するみたいです。
宇宙旅行では、低くて約80km、高くて約600kmくらいの高さまで行くと考えて良いでしょう。
80km、600kmでの重力の大きさ
地上での重力の大きさは9.8です。
少し正確に言うと、重力加速度と呼ばれる1.0kgあたりの重力が9.8になります。
今回は細かいことは気にせず、地上での重力は9.8くらいなんだなと考えます。
(重力加速度のことを重力と呼びます、ご了承ください。単位も省略します。)
さて、重力の大きさFは
$$F=G\frac{Mm}{r^2}$$
で表されることが分かっています。
なお、
Gは万有引力定数で6.67408×10-11
Mは地球の質量で5.9724×1024
rは地球の中心と物体との間の距離。(地球の半径は6,371 kmです。)
mは物体の質量、今回は1.0kgとします。
どれも高校物理で学ぶ内容ですね。
例えば地上では
$$\begin{eqnarray}F&=&6.67408×10^{-11}×\frac{5.9724×10^24×1.0}
{(6371×10^3)^2}\\
&=&9.82030745…\end{eqnarray}$$
となり、重力の大きさが約9.8ということになります。
地上では、地球の中心と物体との間の距離が6,371 kmでしたが、宇宙に飛び立つと間の距離が増えます。
80km地点では6,451km、600km地点では6,971kmです。
これを先程の式にそれぞれ代入すると、
80km
&=&9.57820944…\end{eqnarray}$$
で約9.6
600km地点
&=&8.202573477…\end{eqnarray}$$
で約8.2になります。
重力の大きさ | |
地上 | 9.8 |
地上から約80km | 9.6 |
地上から約600km | 8.2 |
無重力空間 | 0 |
まとめると上の表の通りです。
簡単に想像できると思いますが、地上の重力が9.8であるとき、地上から約600km上空にいても重力が十分残っていると考えられます。
つまり、宇宙旅行で宇宙に行っても無重力にはならないのです。
国際宇宙ステーションは無重力なのか?
国際宇宙ステーション(ISS)は、地上から約400kmの高さに位置しています。
今までの話だと国際宇宙ステーションにも重力が残っていることになりますが、ニュースやYouTubeで見る宇宙ステーション内は無重力空間ですよね。
この疑問はJAXAも答えているのですが、簡単にいうと「国際宇宙ステーションは地球の周りを高速で回っており、その遠心力によって重力が打ち消されている」という理由で、無重力空間に見えています。
少し難しい話になりますが、私たちは重力と遠心力を区別することができないのです。
宇宙旅行で行く宇宙は無重力ではない?
ただ宇宙に行って帰ってくるだけでは無重力空間を体験することはできません。
もし、国際宇宙ステーションのように高速で地球の周りを回ったり、フリーフォールのように落下したりした場合は、無重力空間を体験できるかもしれません。
簡単な説明でしたが、今回の説明は以上となります。