プロスペクト理論は行動経済学の中でも有名で分かりやすい理論であるため、聞いたことある人は多いのではないでしょうか。
今回は、行動経済学の基礎であるプロスペクト理論について、わかりやすく簡単に解説していきます。
限定合理性と行動経済学
行動経済学では限定合理性という考え方が重要になります。
限定合理性とは、合理的でいようとしても人間の意志や計算能力には限界があるという考えです。
私たちは合理的でいようとしていても、何かしら非合理的な部分が出てきてしまいます。
経済学では、ホモエコノミクス(経済人)という経済的に合理的な考えをする人のことを考える場合が多いですが、合理性には限界があるという限定合理性を取り入れることで、実際の人間に近付けて物事を考えようとしたのが行動経済学です。
行動経済学は2002年にノーベル賞を受賞してとても有名になりました。
ただ気を付けてほしいのは、限定合理性と非合理性は異なるということです。
あくまでも、合理的でいようとしても合理的ではない部分が出てきてしまうのが限定合理性であって、最初から非合理でいようとはしません。
期待効用理論とは
期待効用理論とは、人間は、不確実性を伴う選択において期待効用の大きさを基準にして選択をするという理論です。
賭けを行う、保険に加入する、投資を行う等の場合に使われる考えで、上の画像のような宝くじを使って例えられることがおおいです。
例えば、
・50%で100万円貰えるが、50%で何も貰えない
・100%の確率で50万円を貰える
とします。
片方を選ぶとしたら、どちらを選びますか?
この場合、期待値はどちらも50万円で同じですが、後者を選ぶ人が多いです。
これは、50%の確率で何も貰えないかもしれないというリスクがあるせいで、期待値は50万円でも期待効用が小さくなっていると考えることができます。
次に、
・50%の確率で2,500円貰えるが、50%で何も貰えない
・60%の確率で900円貰えるが、40%の確率で400円しか貰えない。
の2つの選択肢があるとします。
片方を選ぶとしたら、どちらを選びますか?
これはみずほ銀行のページに書いてある例です。
この場合、前者は期待値1,250円、後者は期待値700円であり、前者の方が期待値は高いのですが、後者を選ぶ人が多いです。
合理的であれば期待値の高い方を選ぶはずですが、そこまで合理的にはなれないのですね。
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論とは、リスクを伴うような不確実性下における意思決定論のことです。
プロスペクト理論には価値関数と確率加重関数という2つの柱があるため、その2つについて解説していきます。
プロスペクト理論と価値関数
利益よりも損の方が大きく感じる
プロスペクト理論では、得したときの価値よりも損したときの価値の方が大きいと考えます。
・100万円得した
・100万円損した
どちらも同じ100万円ですが、100万円得した時の喜びよりも、100万円損した時の悲しさの方が強く感じるのです。
価値の大きさは金額に比例しない
プロスペクト理論では、価値の大きさは金額に比例しないと感じます。
100万円よりも500万円の方が価値は高いですが、その価値は5倍であると正しく評価することができないのです。
金額が高くなるとその価値の違いが分かりにくくなってきます。
1000円貰ったときに得たと感じる価値と、1100円貰ったときに得たと感じる価値の差は1.1倍ではないのです。
プロスペクト理論と確率加重関数
高い確率は過小評価、低い確率は過大評価してしまう
「70%の確率で安心です!!」
この言葉を見たとき、私たちは「70%で安心なんだ」ではなく「30%で安心ではないんだ」と感じてしまいます。
プロスペクト理論では、高い確率は過小評価、低い確率は過大評価してしまうと考えます。
宝くじで一等を当てる確率は大体0.00001%くらいですが、正しく0.00001%くらいであると受け止めている人は少ないでしょう。
「一等ワンチャン当たるかもしれないよね?」と考えている人は、低い確率を過大評価していると言えるでしょう。
プロスペクト理論
ここで、2つの質問ついて考えてみましょう。
質問A
- 100万円が貰える。
- 50%で200万円貰えるが、50%で何も貰えない
質問B ※貴方は200万円の借金をしているとする。
- 借金が100万円になる
- 50%の確率で借金が無くなるが、50%の確率で借金は200万円のままとなる
質問Aと質問Bにおいて、貴方はどちらの選択をしますか?
AとB共に貰える金額は同じですが、質問Aでは①を、質問Bでは②を選びたくなる人が多いのではないでしょうか。
プロスペクト理論では「利益よりも損の方が大きく感じる」と考えます。
200万円の貯金よりも、200万円の借金の方が重大なことであると感じてしまうのです。
損失を重大なことであると考えてしまうため、質問Aでは「利益が手に入らない」リスクを回避し、質問Bでは「損したままである」ことをどうにかしようと考えてしまうのです。
このように、人間がどのような選択をするのかを考えるのがプロスペクト理論になります。
参考文献
プロスペクト理論については元々知っていたのですが、もっと詳しく知りたいなと思い読んだ本がコチラです。
絵本のような構成でとても分かりやすいので助かりました。
ぜひ参考にしてみてください。