私たちが日常生活で当たり前のように使っているストローですが、「ストローで水を吸うと10mまでしか上がらない」という話を聞いたことはありますか?
実際に10mのストローを使うことはまずないので、「ストローで水を吸うと10mまでしか上がらないのはなぜか」というよりも「ストローで水を吸うと10mまでしか上がらないのは本当なのか」と言う方が正しい気もします。
ストローと水については、度々テレビでも実験をするらしく、NHKの『チコちゃんに叱られる』で放送されたときは話題になりましたよね。
日常生活で使っているストローに関すること、テレビ映えすること、原理が簡単で分かりやすい等の理由から、テレビに使われるのにも納得です。
今回は「ストローで水を吸うと10mまでしか上がらないのは本当なのか」について解説していこうと思います。
(分かりやすく説明するため、圧力と力を厳密に使い分けていません。ご了承ください。)
私たちの周りには空気がある
何を当たり前のこと言っているだ、と思うかもしれませんが、私たちの周りには空気があり、それを大気と呼んでいます。
当たり前すぎて肌で実感することはありませんが、私たちは周りにある空気から力を受けており、その圧力のことを大気圧と言います。
大気圧の大きさは、自分の上にある空気の重さにより圧力と等しいため、山頂では気圧が低くなり、ポテチの袋が膨らむということは誰でも知っていますよね。
1気圧は1013hPaであるため、1013hPaより高ければ高気圧、低ければ低気圧と言いますよね。
中心気圧が950hPaのような台風も毎年見かけます。
ストローの上を塞ぐと、中にある水が零れない?
水やジュースの入ったストローの上を塞ぐと、中に入っている水が零れなくなるということを、誰もが一度は経験したことがあると思います。
なぜ、ストローの上を塞ぐと水が零れなくなるのでしょうか。
普通、重力により水は下に落ちてしまうのですが、水が零れないということは、何かの力で支えられているということになります。
もちろん、水を支えている力の正体は大気圧です。
ストローで空気を吸うと、水の上にある空気が少なくなり圧力が小さくなります。
小さくなった圧力と水の重力の合計が、上向きの大気圧と等しくなったとき、水はその場に静止するのです。
なお、ストローの上側を塞がなかった場合、ストローで吸った空気が元の場所に戻ってしまうため、水は零れてしまいます。
吸っているのは水ではなく空気だった
ストローで水を吸うとき、本当は水ではなく空気を吸っているだけであり、水を吸えていない、ということが皆さん一番勘違いしている点です。
ではなぜ水が吸いあがるのかというと、空気をなくすことによって水が大気圧に押されるからという理由です。
イメージとしてはこの図のように考えてください。
僕たちが空気を吸うと、ストローの中の水を上から押さえつけていた圧力が少なくなります、下から押し上げてくる大気圧は変わらないため、水が大気圧により押し上げられ、水を飲むことができるのです。
よくよく考えてみると、息を思いっきり吹きかけてもあまり動かない水が、ほんの少し吸っただけの力で勢いよく吸えるわけないですよね。
あくまでも、水を押し上げているのは空気であり、私たちではないのです。
ストローで水を吸うと10mまでしか上がらないのはなぜか
1気圧の重さ=水10m分の重さ
大気圧とは空気の重さに関係しているものだ、という説明をしました。
空気はとても軽く、手で持つということもできません。
このように空気はとても軽いのですが、大気圏にある自分の頭上にある空気を全て集めると、水10m分の重さと等しくなります。
水10m分といっても太さはどれくらいなのかというと、同じ太さであれば大気圏にある空気(1013hPaの場合)の重さ=水10m分の重さです。
もう少し正確にいうと、水10.33mくらいです。
なんだか、なぜストローで水を吸うと10mまでしか上がらないのかという理由が見えてきましたよね。
空気は10mまでしか水を持ち上げてくれない
このように、空気の重さ=水10m分の重さであるため、大気圧の持つ力は水10m分が限界です。
もしストローの上側にある空気を全て吸ったとしても、空気の力に限界があるため、水は10mまでしか上がらないのです。
これが、10mまでしか吸えない理由です。
単純に考えると、ストローの上側にある空気を1%吸うだけで水10cm分の力になるため、普段ストローを使うときは、ほんの少し空気を吸うだけで水を飲むことができます。
10mの高さから水を吸うなんて有り得ないと思うかもしれませんが、10m以上の深さのある井戸から水を吸い上げることができない、という経験則が有名だったりします。
なお、人間の肺活量的にストローの空気を10mも吸うことはできないため、もし試す機会があれば、細いストローを使って空気を吸いやすくすることをオススメします。