・内部エネルギーとは
・熱力学第一法則とは
今回は熱力学第一法則についての解説なのですが,物理基礎では簡単に触れて終わりなので,あまり難しくありません。
熱力学第一法則を本格的に使うのは,物理基礎ではなく物理の方であるため,物理基礎だけで大丈夫な人は気軽に勉強してください。
内部エネルギーとは
分子のもつ運動エネルギー+位置エネルギーのこと
内部エネルギーとは,分子のもつ運動エネルギー+位置エネルギーのことであり,記号はU,単位はエネルギーなので[J]です。

図のように,物体(風船)が静止していたとします。
物体が静止しているので運動エネルギーは0Jなのですが,風船の中には気体が入っており,気体分子は熱運動によって運動しているはずです。
このような,分子の持つエネルギーのことを内部エネルギーと言います。
大雑把なイメージとしては,上の図のようなものだと思ってもらって大丈夫です。
「運動エネルギー+位置エネルギー」とは力学的エネルギーのことだったのではないのか?
と思うかもしれませんが,内部エネルギーは力学的エネルギーとは関係ありません。
物体そのものが運動していたり,物体そのものが位置エネルギーを持っていたりする場合は力学的エネルギー
物体を構成している分子や,気体分子などの細かな熱運動や位置エネルギーを内部エネルギーと言います。
分子と分子の間には分子間力という相互作用がはたらき,分子間力による位置エネルギーというものを持つのですが,高校物理基礎・物理では分子間力による位置エネルギーを無視します。
従って,高校物理でいうところの内部エネルギーは,分子のもつ運動エネルギーということになるので,やはりイメージとしては上の図のようなものだと思って大丈夫です。
この内部エネルギーを使って,熱力学第一法則というものを説明していきます。
熱力学第一法則とは
気体の内部エネルギーは,熱を受け取るか仕事をされると増加する
$$ΔU=Q+W$$
$$Q=ΔU+W’$$
(ΔU:内部エネルギーの変化量[J] Q:気体に与えた熱量[J] W:気体にされた仕事[J] W:気体がした仕事[J])
熱力学第一法則とは,気体の内部エネルギーは,熱を受け取るか仕事をされると増加することであり,要は,エネルギーは保存するという法則です。

Δは変化を表す記号です。
Uは内部エネルギーであり,ΔUになると内部エネルギーの変化量になります。
この法則は気体だけではなく固体や液体でも成立するのですが,高校物理基礎・物理では気体の話しか出てこないので,ここでは気体という前提で説明をします。

まず,気体に熱を与えると内部エネルギーは増加します。
内部エネルギーが増加するとは,大雑把に言うと気体分子の運動が早くなるということです。
これはとてもイメージしやすいですね。

同様に,気体に仕事がされる場合も内部エネルギーが増加します。細かい話は物理基礎ではなく物理の方で説明をします。
熱力学第一法則の公式はどっち?
熱力学第一法則の公式は
$$ΔU=Q+W$$
$$Q=ΔU+W’$$
の2種類が存在しており,気体がされた仕事の場合はW,気体がした仕事の場合はW’を使います。
気体がされた仕事Wと気体がした仕事W’には
$$W=-W’$$
という関係があります。
これを使うことで
$$ΔU=Q+W\\
ΔU=Q-W’\\
Q=ΔU+W’$$
と式変形をすることができます。
問題集や参考書によっては,2つの式を使い分けるという説明もあるのですが,覚える公式は
$$ΔU=Q+W$$
の1つだけで良いです!
「気体が仕事をした」場合は,「気体がされた仕事」の符号を逆転させましょう。
例題
例題1
気体に50Jの熱を加え,さらに外部から20Jの仕事をした。気体の内部エネルギーは何J増加するか。
例題2
気体に3.0×105 Jの熱を与えたところ,気体の内部エネルギーが1.0×105 J増加した。この間に気体が外部にした仕事は何Jか。
まとめ
内部エネルギーとは物体の分子の持つ運動エネルギー+位置エネルギーのことなのですが,位置エネルギーは無視するので運動エネルギーしか考えません。
熱力学第一法則は
$$ΔU=Q+W$$
の方の公式を使います。
Wは「気体がされた仕事」なので,「気体が仕事をしている」場合を聞かれたときは,気体がされた仕事Wの符号を変えましょう。