ハインリッヒの法則の間違いと嘘

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ハインリッヒの法則とは 交通事故

ハインリッヒの法則を交通事故の数で例える人が多くいます。

「小さい交通事故の数を減らせば大きな交通事故の数は減るんだ」

この根拠にハインリッヒの法則を使うのです。

小さい事故が減れば大きな事故が減るかどうかはどもかく、その根拠としてハインリッヒの法則を使うのは適切なのでしょうか?

内閣府の交通安全白書によると、日本の交通事故の数は「平成29年中の交通事故発生件数は47万2,165件で、これによる死者数は3,694人負傷者数は58万850人であり(死傷者数は58万4,544人)、負傷者数のうち、重傷者数は3万6,895人(6.4%)、軽傷者数は54万3,955人(93.6%)であった」そうです。

これが多いと見るか少ないと見るかはさておき、数字としてはこれが事実です。

こういう事故や怪我の数の話をすると必ず出てくるほどリスクマネジメントの世界でかなり有名なハインリッヒの法則ですが、ネット上であまりにも間違いと嘘を見かけるため、今回はハインリッヒの正しい説明をしていこうと思います。

ハインリッヒの法則の間違いと嘘

あまりにもネット上にハインリッヒの法則の誤った解釈が広がっているのを見かけるため、まずはネット上でよく見られるハインリッヒの法則の嘘の説明をします。


ハインリッヒはアメリカの損害保険会社に勤めていた人で、ある工場で発生した労働災害を調査し、ハインリッヒの法則というものを見出しました。

「ハインリッヒの法則」(「1:29:300の法則」とも呼ばれる)とは、労働災害の世界で有名な事故についての経験則であり、
1つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)があるということが分かっています

これがネット上でよく見かけるハインリッヒの法則の間違った説明です。

どこが間違いか分かりますか?

ハインリッヒの法則でよく見かける大きな間違いは、

・事故の件数ではなく怪我の大きさに関する法則であること

1つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがあること

・軽い事故やヒヤリハットを起こさないことで重大な事故を回避することが可能という主張

・そもそも、ハインリッヒの法則は1つじゃないこと

です。

ハインリッヒの法則の間違った例

ハインリッヒの法則を使った典型的な間違った例がコチラです。

大きなクレーム・苦情が1回入るということは、29回の小さなクレームと300件のクレームにならなかった不満があるということ。

つまり、300件の小さな不満を減らすことで、お客様の満足度を高めていく必要がある。

小さな不満を減らすことでお客様の満足度は上がるかもしれませんが、その根拠としてハインリッヒの法則を使うのは間違いです。

ハインリッヒの法則の正しい説明

それでは、ハインリッヒの法則の正しい説明を見ていきましょう。

ハインリッヒはアメリカの損害保険会社に勤めていた人で、ある工場で発生した労働災害を調査しハインリッヒの法則というものを見出しました。

そもそも「ハインリッヒの法則」には複数の法則があります。その中でも「300:29:1の法則」は、労働災害の世界で有名な事故についての経験則です。

ある同一人物が330回事故にあったとき、300回は怪我をせず、29回は軽い怪我をし、1回は重い怪我をしてしまいます。その背後にはおそらく数千に達すると思われるだけの不安全行動と不安全状態が存在するのです。



ハインリッヒの法則とは、事故の回数を表す法則ではなく怪我の有無を表す法則です。

これがインターネット上で見られる最も大きな誤りです。

ハインリッヒの法則とヒヤリハット

ハインリッヒの法則ではヒヤリハットという言葉が良く使われます。

ヒヤリハットとは「怪我がなかった」という意味であり、「事故にならなかった」という意味ではありません。

ハインリッヒの法則と事故の数

事故の数は対策をすることである程度コントロールすることができますが、いざ事故が起きたときにその怪我の大きさをコントロールすることができません

・事故の件数に関する法則
同一人物が起こした事故
→「ただの事故」ではなく「怪我の有無に関する事故」

1つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある
重症:軽傷:怪我のない事故の比率が1:29:300であるということ

・軽い事故やヒヤリハットを起こさないことで重大な事故を回避することが可能→事故の回避はある程度のコントロールが可能。あくまでも、どのくらいの怪我をしてしまうについての法則

・そもそも、ハインリッヒの法則は1つじゃない
→有名なのは、ハインリッヒの法則の1つである「300:29:1の法則」

まとめると、上のようになります。

1:29:300のことばかり取り上げられることが多いですが、注目すべき点はその背後です。

事故が起きれば怪我をしてしまうものであり、大きな怪我をした事故だけを分析しても意味はありません。

300の怪我をしない事故や、その背後にある数千に達する不安全行動と不安全状態に注目し、対策を考えるべきであるという主張がハインリッヒの考え方です。

その他のハインリッヒの法則

こちらは有名ではありませんが、「ハインリッヒの法則」は他にも内容があります。

事故のうち98%は回避可能である。
回避可能な事故のうち、88%は雇用者、10%は労働環境が原因で起こってしまうものであり、残りの2%はどうしても回避できない事故だ。

これを88:10:2の法則といいます。

その他にも法則はあるのですが、どうして「300:29:1の法則」がこんなにも有名であり、その内容が微妙に間違って広まっているのかは私にも分かりません。

「300:29:1の法則」はキャッチーで目に入りやすいのでしょうか?

その原因は分かりませんが、ただ、も物事は可能な限り正しく認識するべきですね。

ハインリッヒの法則は古い?

ハインリッヒの法則が発表されたのは1931年、既に90年もの年月が流れています。

未だに現役かのような扱いをされるハインリッヒの法則ですが、かなり古い時代のものであることは否定できません。

1900年代と比べ、現代は産業の世界は大きく変化しています。

ハインリッヒの法則に代わる新しい法則が見つかっても何も不思議ではありませんね。

参考文献 ハインリッヒ産業災害防止論

今回参考にした文献です。

もっと詳しく知りたければ、ネットで探すよりも本を読んだ方が良いです。

このサイトにも言えることですが、ネットの情報を信じてはいけません。しっかりとして本を参考にして正しい知識を身に付けましょう。

 

 

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