定積モル比熱と定圧モル比熱

定積モル比熱と定圧モル比熱
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この記事で学べる内容

・モル比熱とは

・定積モル比熱とは

・定圧モル比熱とは

・マイヤーの関係とは

今回は、定積モル比熱とは何か、定圧モル比熱とは何かについて、わかりやすく簡単に解説していきます。

モル比熱(モル熱容量)とは

モル比熱

1molの気体の温度を1K(1℃)上げるのに必要な熱量のこと

モル比熱(モル熱容量)とは、1molの気体の温度を1K(1℃)上げるのに必要な熱量のこです。
比熱「1g」が「1mol」に変わったので、モル比熱(モル熱容量)といいます。

モル比熱をcとすると、物質量n[mol]を用いることで\(Q=ncΔT\)と表すことができるのですが、定積と定圧でモル比熱が異なるため、定積モル比熱を\(C_V\)、定圧モル比熱を\(C_p\)として考えます。

モル比熱とは

定積モル比熱とは

定積モル比熱CV[J/(mol・K)]

定積変化の場合のモル比熱

$$Q=nC_VΔT$$

単原子分子理想気体のとき、\(C_V=\frac{3}{2}R\)であり、\(Q=\frac{3}{2}nRΔT\)

定積モル比熱とは、定積変化のときのモル比熱のことです。
定積モル比熱を\(C_V\)とすると、定積変化のとき\(Q=nC_VΔT\)となります。

単原子分子理想気体のとき\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であり、定積変化では\(W=0\)なのと、\(Q=nC_VΔT\)であることから、

$$ΔU=Q+W\\
\frac{3}{2}nRΔT=nC_VΔT+0\\
C_V=\frac{3}{2}R$$

となります。
つまり、単原子分子理想気体のときは\(C_V=\frac{3}{2}R\)、つまり\(Q=\frac{3}{2}nRΔT\)となります。

定圧モル比熱とは

定圧モル比熱Cp[J/(mol・K)]

定圧変化の場合のモル比熱

$$Q=nC_pΔT$$

単原子分子理想気体のとき、\(C_p=\frac{5}{2}R\)であり、\(Q=\frac{5}{2}nRΔT\)

定圧モル比熱とは、定圧変化のときのモル比熱のことです。
定圧モル比熱を\(C_P\)とすると、定圧変化のとき\(Q=nC_pΔT\)となります。

単原子分子理想気体のとき\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であり、定圧変化では\(W=-pΔV\)、つまり\(W=-nRΔT\)なのと、\(Q=nC_pΔT\)であることから、

$$ΔU=Q+W\\
\frac{3}{2}nRΔT =nC_pΔT-nRΔT \\
C_p=\frac{5}{2}R$$

となります。
つまり、単原子分子理想気体のときは\(C_p=\frac{5}{2}R\)、つまり\(Q=\frac{5}{2}nRΔT\)となります。

マイヤーの関係とは

マイヤーの関係

$$C_p=C_V+R$$

定積モル比熱\(C_V=\frac{3}{2}R\)と定圧モル比熱\(C_p=\frac{5}{2}R\)より、\(C_p=C_V+R \)となり、これをマイヤーの関係といいます。

\(C_V=\frac{3}{2}R\)と\(C_p=\frac{5}{2}R\)は単原子分子理想気体のときしか使えませんが、単原子分子理想気体ではなくてもマイヤーの関係が成り立つことが知られています。

問題に\(C_V\)しか書いてなく、\(C_p\)が書いていない場合、マイヤーの関係を使って\(C_p\)を\(C_v+R\)とするときがたまにあります。

例題

例題1

物質量がn、絶対温度がT0、定積モル比熱をCVの理想気体がある。気体定数をRとするとき、次の各問に答えなさい。
(1)この気体の体積を一定に保ったまま、絶対温度をTまで上昇させた。内部エネルギーの変化ΔUを求めなさい。
(2)この気体の圧力を一定に保ったまま、絶対温度をTまで上昇させた。気体が外部にした仕事W’を求めなさい。

解答

まずは単原子分子理想気体かどうかを確認しましょう。今回は単原子分子理想気体ではないので、\(C_V=\frac{3}{2}R\)、\(C_p=\frac{5}{2}R\)を使うことはできません。

次に、(1)と(2)が何変化なのかを確認しましょう。

(1)定積変化であるため、\(W=0\)を使うことができます。

内部エネルギーの変化ΔUを求めるために\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)を使いたいと思ってしまいますが、単原子分子理想気体ではないため使えません。今回は熱力学第一法則を使ってΔUを求めましょう。

また、定積変化\(Q=nC_VΔT\)も使います。

熱力学第一法則より

$$ΔU=Q+W\\
ΔU=nC_V×(T-T_0)$$

∴\(nC_V(T-T_0)\)

(2)定圧変化であるため\(W=-pΔV\)、さらに、物質量が一定であるため、\(W=-nRΔT\)を使います。

$$W=-nRΔT\\
W=-nR(T-T_0)\\
W’=nR(T-T_0)$$

です。外部にした仕事W’なので、符号を変えましょう。

∴\(nR(T-T_0)\)

定圧モル比熱とマイヤーの関係を用いた別解

定圧モル比熱とマイヤーの関係を用いて問題を解くことができます。
定圧モル比熱を用いた\(Q=nC_pΔT\)を使いたいのですが、問題文に\(C_p\)がないため、マイヤーの関係\(C_p=C_V+R\)を用いることで、\(Q=n(C_V+R)ΔT\)とします。

熱力学第一法則より、

$$ΔU=Q+W\\
nC_V×(T-T_0)=n(C_V+R)×(T-T_0)+W\\
W=-nR(T-T_0)\\
W’=nR(T-T_0)$$

となります。
なお、内部エネルギーの変化ΔUはΔTのみで決定するため、(1)と同様に\(nC_V×(T-T_0)\)です。

まとめ

物理基礎で勉強した\(Q=mcΔT\)を質量mではなく物質量nで考えたのが、モル比熱です。
定積変化と定圧変化でモル比熱が異なるため、定積変化では\(Q=nC_VΔT\)、定圧変化では\(Q=nC_pΔT\)とします。

また、単原子分子理想気体のときは\(C_V=\frac{3}{2}R\)、\(C_p=\frac{5}{2}R\)です。

 

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