熱機関と熱効率

熱機関と熱効率
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この記事で学べる内容

・熱機関とは

・熱効率とは

物理基礎でも勉強した熱機関と熱効率ですが、物理の状態変化でも登場する内容なので、熱機関と熱効率について改めてわかりやすく簡単に解説していきます。

熱機関とは

熱機関

熱を仕事に変える装置

自動車のエンジンや、発電所のタービン等

熱機関とは、熱を仕事に変える装置のことです。

高温の熱源から熱を貰い、その一部を仕事(主に運動エネルギー)に変え、余った熱を放出します。
自動車のエンジンや発電所のタービンなどが熱機関の代表的な例ですね。

熱機関とは

物理基礎の解説ページでは、Q1、Q2としましたが、吸収した熱・放出した熱ということを分かりやすくするため、Qin、Qout、とすることもあります。

また、熱機関がした仕事は、WではなくW’とすることも多いです。

なお、物理基礎同様、\(Q_{in}=W’+Q{out}\)の関係が成り立ちます。

熱効率とは

熱効率e

吸収した熱量を仕事に変える割合

$$e=\frac{W’}{Q_{in}}=\frac{Q_{in}-Q_{out}}{Q_{in}}$$

(Qin:吸収した熱量[J] W’:熱機関がした仕事[J] Qout:放出した熱量[J])

熱効率とは、吸収した熱量を仕事に変える割合のことです。記号はeで単位はありません。

熱サイクル

上図のような熱サイクルでは、A→BとB→Cで熱を吸収し、C→DとD→Aで熱を放出します。
また、一周の面積は気体がした仕事になります。

各変化の吸収した熱Qin・気体がされた仕事W・内部エネルギーの変化ΔUをそれぞれ求めることのできる能力が問われます。

例題

例題1

下図のように、n[mol]の単原子分子理想気体の圧力P[Pa]と体積V[m3] を、状態A→B→C→D→Aの順に変化させた。気体定数をR[J/(mol・K)] 、Aの温度をT[K]とする。このサイクルを熱機関とみなしたときの熱効率を求めなさい。

p-vグラフ熱効率問題

解答

まず、単原子分子理想気体なので\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)を使うことが可能であることを確認しましょう。

A→Bを①
B→Cを②
C→Dを③
D→Aを④
とします。

熱効率を求めるためには、①②③④全てのΔU、Qin、Wを求める必要があります。

なお、熱力学第一法則\(ΔU=Q+W\)を用いることで、ΔU、Q、Wのうち2つが分かれば3つ目が分かるので、頑張ってΔU、Q、Wを求めましょう。

p-Vグラフの問題は熱効率に限らずΔU、Q、Wを求めることで問題を解くことができます。

ΔUは、単原子分子理想気体であるため\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)を使います。

Qは、定積のときは\(Q=nC_VΔT\)、定圧のときは\(Q=nC_pΔT\)を使います。
また、単原子分子理想のときは、\(C_V=\frac{3}{2}R\)、\(C_p=\frac{5}{2}R\)であることも使います。

熱効率解答

p-Vグラフを見ると、A~Dの絶対温度が一瞬で求めることができます。

A→Bで圧力が3倍なので絶対温度も3倍の3T、
B→Cで体積が4倍なので絶対温度も4倍の12T、
C→Dは圧力が\(\frac{1}{3}\)倍なので絶対温度も\(\frac{1}{3}\)倍の4T、
D→Aは体積が\(\frac{1}{4}\)倍なので絶対温度も\(\frac{1}{4}\)倍のT、
です。

絶対温度が分かるので、ΔTも簡単に求めることが可能ですね。

①A→Bは定積変化なので\(W=0\)です。
単原子分子理想で定積変化のとき、\(Q=\frac{3}{2}nRΔT\)より、

$$Q=\frac{3}{2}nRΔT\\
Q_{AB}=\frac{3}{2}nR×2T\\
Q_{AB}=3nRT$$

単原子分子理想のとき、内部エネルギーの変化ΔUは\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であるため、

$$ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\\
ΔU_{AB}=\frac{3}{2}nR×2T\\
ΔU_{AB}=3nRT$$

となります。

熱効率解答2

各変化における、ΔU、Q、Wを分かりやすくするため、上のような表を書きましょう。

この問題では、熱力学第一法則\(ΔU=Q+W\)があるので、ΔU、Q、W の3つうちどれか1つの公式を忘れてしまっても問題を解くことが可能です。

②B→Cは定圧変化であるため、\(W=-pΔV\)です。

$$W=-pΔV\\
W_{BC}=-3p×(4V-V)\\
W_{BC}=-9pV\\
W_{BC}=-9nRT$$

熱効率解答3

上図の面積が仕事になるため、\(W=-pΔV\)を覚えていなくても仕事の大きさが9pVであると求めることができます。
なお、気体が膨張しているときは気体が仕事をしているため、Wはマイナスになります。

単原子分子理想で定圧変化のとき、\(Q=\frac{5}{2}nRΔT\)より、

$$Q=\frac{5}{2}nRΔT\\
Q_{BC}=\frac{5}{2}nR×9T\\
Q_{BC}=\frac{45}{2}nR $$

単原子分子理想のとき、内部エネルギーの変化ΔUは\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であるため、

$$ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\\
ΔU_{BC}=\frac{3}{2}nR×9T\\
ΔU_{BC}=\frac{27}{2}nRT$$

となります。

熱効率解答4

③と④も同様に考えます。

①C→Dは定積変化なので\(W=0\)です。
単原子分子理想で定積変化のとき、\(Q=\frac{3}{2}nRΔT\)より、

$$Q=\frac{3}{2}nRΔT\\
Q_{CD}=\frac{3}{2}nR×(-8T)\\
Q_{CD}=-12nRT$$

単原子分子理想のとき、内部エネルギーの変化ΔUは\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であるため、

$$ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\\
ΔU_{CD}=\frac{3}{2}nR×(-8T)\\
ΔU_{CD}=-12nRT$$

④D→Aは定圧変化であるため、\(W=-pΔV\)です。

$$W=-pΔV\\
W_{DA}=-p×(V-4V)\\
W_{DA}=3pV\\
W_{DA}=3nRT$$

熱効率解答5

上図の面積が仕事になるため、\(W=-pΔV\)を覚えていなくても仕事の大きさが3pVと分かります。

単原子分子理想で定圧変化のとき、\(Q=\frac{5}{2}nRΔT\)より、

$$Q=\frac{5}{2}nRΔT\\
Q_{DA}=\frac{5}{2}nR×(-3T)\\
Q_{DA}=-\frac{15}{2}nR $$

単原子分子理想のとき、内部エネルギーの変化ΔUは\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であるため、

$$ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\\
ΔU_{DA}=\frac{3}{2}nR×(-3T)\\
ΔU_{DA}=-\frac{9}{2}nRT$$

となります。

熱効率解答6

上図より、吸収した熱量は\(Q_{in}=3nRT+\frac{45}{2}nRT \)であり、1周で気体がした仕事は\(W’=-(-9nRT+3nRT)\)、つまり\(W’=6nRT\)となります。

気体がした仕事W’であるため、された仕事Wに-1を掛けるのを忘れないようにしましょう。

熱効率は\(e=\frac{W’}{Q_{in}}\)であるため、

$$e=\frac{W’}{Q_{in}}\\
e=\frac{6nRT}{3nRT+\frac{45}{2}nRT}\\
e=\frac{4}{17}$$

∴\(\frac{4}{17}\)

まとめ

熱効率は物理基礎で勉強した内容と同じく\(e=\frac{W’}{Q_{in}}\)ですが、物理ではp-Vグラフと熱サイクルの問題として登場します。

全ての変化のΔU、Q、Wを求め、一周で吸収した熱量と、一周で気体がした仕事を求めてから、熱効率を求めましょう。

 

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