チンパンジーが相対性理論を理解することは可能だと思いますか?
・チンパンジーは1から10までを覚えることができる
・チンパンジーがジャンケンを学習した
・チンパンジーがスマホをスクロールして動画を見た
等、私たちはチンパンジーが賢いというエピソードをよく耳にしますが、チンパンジーが相対性理論を理解できると考えている人はいないでしょう。
私たちは、チンパンジーという種の能力に限界があると考え、相対性理論を理解することは明らかに限界を超えていると決めつけているのです。
さて、私たちは自分たちの種のことを”人類”と呼び、”動物”とは別の物かのように扱う風潮があります。
しかし、私たちは所詮、ホモ・サピエンスという種の生き物であり、種としての能力に限界があるのではないでしょうか?
私たち人類にも、他の動物のように限界や本能があるのかどうか、私なりの意見をまとめたいと思います。
人類とホモ・サピエンス
ホモ・サピエンスとは、私たち現生人類が属している種の名前のことです。
生物には、大雑把に「界・門・網・目・科・属・種」という分類が存在しています。
私たちは「動物界・脊椎動物門・哺乳網・サル目・ヒト科・ホモ属のホモ・サピエンス」として分類されています。
正しい説明ではないですが、「交配し子供を作ることができると同じ種である」と考えると分かりやすいでしょう。
ウサギとネコは交配しても子供を作れない。よって、別の種の動物である。
のような感じです。(※厳密に正しい説明ではありません。あくまでもイメージです。)
中にはウマとロバの子どもであるラバ、ライオンとトラの子供であるライガー等、異種交配を行うことのできる種も存在します。
分かれてから比較的間もない種同士であれば、異種交配を行うことも可能の場合もあるのです。
さて、「私たちとチンパンジーは遺伝的に似ている」とよく言われており、生物の分類としてヒト科まで共通しています。
のように、人類だけが特別な存在だと思いたがる人もいますが、それは違います。
私たちもチンパンジーや他の動物と同じく、ホモ・サピエンスという生物の種の1つに分類されている生物であり、どの生物も全て特別なのです。
ちなみに、私たちとチンパンジーのDNAの塩基配列は98.8%も一致しています。
私たち現生人類だけが特別というわけではないのです。
ホモ・サピエンス以外のホモ属
他のホモ属
「人類=ホモ・サピエンス」ではありません。
絶滅してしまいましたが、
ホモ・ネアンデルターレンシス
ホモ・フローレシエンシス
ホモ・エレクトス
等、数多くのホモ属が存在していました。
あくまでも、現生人類はホモ・サピエンスだけなのであって、人類(ホモ属)は他にも種が存在していたのです。
さて、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)について、どのようなイメージを持っていますか?
また、なぜ他の人類が絶滅してしまい、我々ホモ・サピエンスしか残っていないのでしょうか?
ホモ・サピエンス以外のホモ属が絶滅したと考えられる理由は諸説ありますが、確実に分かっていることは、ホモ・サピエンスが新しい土地に着くと先住民の他のホモ属は絶滅してしまうということです。
では、ホモ・サピエンスと他のホモ属の違いは何かについて考えていきましょう。
ホモ・サピエンスと他のホモ属の違い
ホモ・サピエンスと他のホモ属の違いは何でしょうか?
「人間と他の動物の違いは何?」
と聞かれると、
等を思い浮かべるかもしれません。
まず、頭が良い動物はホモ・サピエンス以外にもいます。チンパンジーは頭が良いって言いますよね。
と思っていた時期が私にもありました。
驚くことに、ネアンデルタール人の脳容量は現生人類の脳容量より大きいことが分かっています。
ネアンデルタール人の方が私たちより頭が良かった可能性があり、私たちホモ・サピエンスが一番頭の良い生物とは限らないのです。
次に、道具を使える、火を使えることについてですが、多くのホモ属が火を使用していたと分かっています。
また、石器はもちろん、船を作り航海していたホモ属もいたことも分かっています。
道具を使えることも、私たちの特有の物ではないのです。
会話ができるのも、私たちホモ・サピエンス特有の物ではありません。
スカイブルーの金玉を持つことで(一部の人に)人気のあるサバンナモンキーですが、その鳴き声の意味を突き止めた動物学者がいます。
「気を付けろ!ワシだ!」というサバンナモンキーの鳴き声を録音し、他のサバンナモンキー達に聞かせたところ、サバンナモンキーたちは恐ろし気に上を見上げたのです。
言語を持っている動物は数多く存在しているということですね。
最後に、直立二足歩行についてですが、私たちホモ属の祖先であるアウストラロピテクスが直立二足歩行していたことが分かっています。
直立二足歩行も、私たちの特有の物ではありません。
それでは、ホモ・サピエンスの特徴とは一体何のでしょうか?
ホモ・サピエンスの特徴
私たちホモ・サピエンスの特徴は、「噂話」をすることができ、「虚構」を生み出すことです。
サバンナモンキーは「気を付けろ!ワシだ!」と言うことができます。
しかし、ホモ・サピエンスは、「気を付けろ!ワシだ!」だけではなく、
「昨日ワシが通ったらしい」
「次はいつワシが来るのだろうか」
と言うことができます。
言語を柔軟に使いこなし、噂話をすることができることが、ホモ・サピエンスの特徴なのです。
さて、霊長類の脳の大きさと群れの大きさに相関関係があり、群れの上限の数(意思疎通のできるギリギリの数)のことをダンバー数と言います。
チンパンジーの群れの限界は大体20~50匹と言われており、大きな群れになると一部のチンパンジーが群れ離れ、新たな群れを作ってしまうことが知られています。
これは、チンパンジーのダンバー数が20~50であるということです。
ネアンデルタール人のダンバー数は150であり、150人が群れの限界だったと言われています。
私たちホモ・サピエンスのダンバー数も150であり、本来であれば150人以上の集団を保つことはできません。
しかし、私たちは「虚構」を用いることで150人以上の集団を保つことができます。
私たちは「虚構」を信じることによって、協力し、連帯感を得ることが可能です。
初めて会った人でも、同じ野球チームを応援しているというだけで仲良くすることができます。
全然知らない人でも、自分と同じ都道府県の出身というだけで、応援したい気持ちが湧いてきます。(都道府県なんて、国が決めた区分でしかないのにも関わらず。)
同様に、古代のホモ・サピエンスも同じ守護神や精霊を信じることで150以上の集団になっても協力することができたのです。
私たちは、虚構を信じることで実力以上の力を示すことができます。
150人以上の集団でも、同じものを信じることで協力することができます。
ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより脳も体格も大きく手先も器用でしたが、「虚構」を信じていないため、群れの人数は150人が限界であり、死を恐れず戦うこともできませんでした。
「虚構」を信じ、「噂話」として話をすることができるのが、ホモ・サピエンスがホモ・サピエンスたる所以なのです。
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の異種交配
ネアンデルタール人が進化してホモ・サピエンスになったと思っている人がいるようですが、それは大きな勘違いです。
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の関係は、ウマとロバ、ライオンとトラのような関係です。
ネアンデルタール人はヨーロッパ大陸に住んでいたことが知られているのですが、なんと、現在の人類の遺伝子の一部にネアンデルタール人の遺伝子が含まれていることが分かっています。
アジア人は1.8%
ヨーロッパ人は1.7%
アフリカ人にも0.5%
も、私たちの遺伝子の中にネアンデルタール人の混じっているのです。
つまり、私たちホモ・サピエンスはネアンデルタール人との異種交配が可能であり、異種交配をした過去が存在していたということが判明しました。
遠い昔、ネアンデルタール人のロミオとホモ・サピエンスのジュリエットがいたかもしれないと思うと、不思議な気持ちですね。(恋愛感情が存在していたかは別ですが…)
所詮、私たちはホモ・サピエンスという種であることから逃れられない
人間の三大欲求は「睡眠欲」「食欲」「性欲」であり、この3つの無い人生は考えられません。
私たちが人間である以上、「睡眠欲」「食欲」「性欲」という種としての本能から逃れられないのは仕方のないことです。
しかし、私たちホモ・サピエンスは、「噂話」と「虚構」も本能として持っており、この2つからも逃れることができません。
数年ぶりに行われた同窓会
部活終わりの部室
会社の飲み
親戚の集まり
SNS上での会話
絶対に「噂話」をしますよね?
実は、私たちホモ・サピエンスの話している言葉の大半は「噂話」です。
私たちは「噂話」をするよう数十万年かけて脳みそにプログラムされており、「噂話」をしてしまうのはホモ・サピエンスとしての本能に従った行動だったのです。
「噂話」は他人への評価を決めます。
数万年前、「悪い噂話」が広まった個人は抹殺される対象でした。
私たちが他人からの評価を気にしてしまうのは、私たちがホモ・サピエンスだからなのです。
私たちがホモ・サピエンスである以上、「噂話」を止めることはできませんし、人からの評価を気にしないこともできません。
私たちが生物の種の1つである以上、私たちは何にも縛られない思考をすることはできないのです。
また、私たちホモ・サピエンスに宇宙の真理を理解することは不可能です。
チンパンジーが相対性理論を理解できないのと同様に、ホモ・サピエンスの理解力にも限界があり、私たちはホモ・サピエンスという種を超越することはできないのです。
つまり、私たちは所詮ホモ・サピエンスであり、種としての本能や能力の限界から逃れることはできない、というわけです。
今あなたは何を考えていますか?
その考えに至ったのはあなたがホモ・サピエンスだからであり、ホモ・サピエンスと同じ脳容量を持った別の知的生命体であれば、別の考えをしていたかもしれません。
参考文献
今回参考にした本です。
私の個人的な思想とは別に、単純にホモ・サピエンスとは何かについてまとめてあります。
全世界で1600万部を突破した、とても有名な一冊です。