「琴線に触れる」とは、良いものに触れて感動を覚えるという意味の言葉です。
例文として、「後輩の応援が心の琴線に触れた…。今年こそは絶対に優勝をしてみせるんだからっ!」のように使います。
しかし、「琴線に触れる」という言葉の意味を間違って使っている人をネット上でたまに見かけます。
従って、今回は「琴線に触れる」の意味と使い方について簡単に説明します。
「琴線に触れる」は怒りを買うという意味ではない
「琴線に触れる」とは、上にも書いた通り、良いものに触れて感動を覚えるという意味の言葉です。
より正確に言うと、心の奥に秘められた感じやすい心情を刺激して、感動や共鳴を与えることを指します。
琴線とは、文字の通り「琴の糸」のことで、比喩表現として「人の心の奥に秘められている真情」を意味します。
「琴の綺麗な音が心の奥で響き感動して涙を流してしまうかのように、あなたの言葉が私の心の中に響きました」という意味で使う言葉であり、決して「怒りを買う」という意味で使う言葉ではありません。
琴の響きで感動する気持ちは分かりますが、琴の響きで怒り出す気持ちなんて考えられないですよね。
文科省が行った平成19年度の「国語に関する世論調査」によると、「琴線に触れる」の意味を怒りを買ってしまうことと答えた人は35.6%で、感動や共鳴を与えることと答えた人は37.8%とのことです。上の図は平静19年度調査の年齢別のグラフです。
その後、平成27年にも調査を行った結果、「琴線に触れる」の意味を怒りを買ってしまうことと答えた人は31.2%で、感動や共鳴を与えることと答えた人は38.8%となりました。改善されてますね。
Twitter上で確認できる誤用の典型例
「琴線に触れる」を「怒りを買う」という意味として誤用している人がいることを信じられない人もいると思いますが、Twitterで「琴線に触れる」と調べると体感10人に1人くらいの割合で誤用している人を見かけます。
テキトーに検索して上の方に出てきたツイートを貼っていきます。
https://twitter.com/Camille_Dyalan/status/1635081330974416896https://twitter.com/Neck35/status/1627818835842854912 https://twitter.com/0811Hinataoi/status/1626360350122864643「男が奢る」発言で炎上みたいな話があるけど、別にそう思う人がいてもいいと思うし実際奢りたい男も一定数以上いるんだからそれでもいいんじゃないかな。
問題になるのは「奢るべき」という強い言葉に反応してしまう単語脳の方には、そこが強烈に琴線に触れるという事なんでしょうか?— B・タロー (@bbbtaro) February 22, 2023
ま、皆が皆相性良いとは限らんからある程度はね。
とりあえず特定のものに対しての批判、中傷(に近い発言含め)はヘイト買いやすいから気をつけようね、ってくらい軽く認識しといてね、ってとこだな自分からは。
ただしキャラ名指しの批判、中傷は別。それは俺の琴線に触れるからマジでやめてね。— 結城望 (@yukikareha) February 11, 2023
あくまで一部抜粋しているだけで、「琴線に触れる」でツイート検索すると大半の人は正しい使い方をしています。
「琴線に触れる」と「逆鱗に触れる」を混同している説
「琴線に触れる」を「怒りを買う」という意味で誤用してしまうのは、「逆鱗に触れる」と混同しているからではないでしょうか。
「逆鱗に触れる」とは目上の人を怒らせてしまうという意味の言葉であり、「琴線に触れる」と同じく「~に触れる」という言葉であるため、「琴線に触れる」の誤用の原因として可能性の高い言葉であることが想像できます。
ただそれだと、どうして素直に「逆鱗に触れる」を使わないのかが不思議ですが、説としては有力なように思えます。
「逆鱗に触れる」は目上の人に使う言葉
そもそも、「逆鱗に触れる」は目上の人に使う言葉であって、自分や目下の人に使う言葉ではありません。
いやいや、俺の逆鱗ってなんだよってなりますよね。違和感があります。
目上の人に使う方が自然で違和感ありません。
「逆鱗に触れる」は自分や目下の人に使えないため、自分や目下の人に使おうとすると違和感が大きいのです。
上のTwitter上で確認できる誤用の典型例に載せたツイートの「琴線に触れる」を「逆鱗に触れる」に置き換えたとしても、自分や目下の人に対して使っている文章になってしまうため誤用となります。
「琴線に触れる」を使うこと自体誤用ですが、「逆鱗に触れる」に置き換えたとしても誤用なのです。
個人的な推測ですが、「逆鱗に触れる」は目上の人にしか使えない言葉であるため、自分や目下の人に使いたいときに、「琴線に触れる」を間違って使ってしまうのではないでしょうか。
「逆鱗に触れる」は目上専用ですが、「琴線に触れる」自体は目上ではなくても大丈夫ですからね。意味は違いますが。
まぁ、目上とか目下以前に、「琴線に触れる」を「怒りを買う」という意味で使うこと自体が違和感あると言われたら、それはそうなのですが…。
まとめ
「琴線に触れる」とは、心の奥に秘められた感じやすい心情を刺激して、感動や共鳴を与えるという意味です。
一方、「逆鱗に触れる」とは、目上の人を怒らせてしまうという意味の言葉です。
2つ全く別の言葉ですが、「琴線に触れる」を「怒りを買う」という意味で誤用する人が一部います。