「表現の自由はどこまで許されるのか?」という議論があちこちで行われています。
例えば日本では、大阪市のヘイトスピーチに関する条例が合憲か違憲か最高裁判所にて争われました。
日本では表現の自由が認められており、自由に表現したり意見することは非常に重要です。
一方、表現の自由が制限される場合もあります。
「俺はありのままの自分を表現したいんだー!!」と言って裸で出歩いたら逮捕されるでしょうし、「これが俺の挨拶だ!」と言いながら他人を殴っても逮捕されますよね。
表現の自由と言いながら制限される場合もある。じゃあ、一体どこからがセーフでどこからがアウトなのか?
その考えを書き記していきたいと思います。
表現の自由の一般論
表現の自由の根拠は憲法21条の第一項です。
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
(日本国憲法第21条より)
21条があるため、日本人は表現の自由を持っていると考えられます。
一方で、憲法13条には以下のような条文があります。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする
(日本国憲法第13条より)
13条を根拠に、個人として尊重しないこと・公共の福祉に反することは、表現の自由を制限しても良いとされています。 公然わいせつ罪が典型例でしょう。
この「個人として尊重しないこと・公共の福祉に反すること」が抽象的で曖昧なものであるため、「表現の自由ってどこまでがセーフでどこからがアウトなの?」という疑問が出てくるのです。
表現の自由を制限・規制する基準はどこなのか?
表現の自由の基準は明確ではない
表現の自由を制限・規制する基準はどこなのか?
その基準は明確ではありません。明確だったら困らないです。
ただ、表現の自由を制限した方が良いと思うときには共通点があります。
・表現の自由は時と場合によって制限されることがある
・時と場合とは、「受け手側の人数の多さ」と「文化」によって変化する
表現の自由は「受け手側の人数の多さ」と「文化」によって、制限する範囲が変化します。
どうしてこう考えられるのか、「放送禁止用語」と「ヒップホップ文化」を使って具体的に説明したいと思います。
「放送禁止用語」と「ヒップホップ文化」
表現の自由について考えるため、「放送禁止用語」と「ヒップホップ文化」を例にして考えました。
放送禁止用語
まず、放送禁止用語として
色盲→色覚障害
農夫→農家
基地外→×
のように、言葉を言い換えたり使わなかったりしています。
放送禁止用語は法律により規制されているわけではなく、自主規制として使われているものです。
一見、表現の自由と放送禁止用語は相反する存在のように見えますが、個人の尊重や公共の福祉を考慮した結果、表現の自由を制限した方が良いと考えられています。
小さなお子さんが見ている番組では放送内容に配慮をする必要があります。
他にも、差別的な内容を放送することで社会的な問題が起こる可能性もありますよね。
放送禁止用語が本当に個人の尊重や公共の福祉を守れるものなのかどうかは議論の余地がありますが、放送禁止用語を使用することで社会的な問題(混乱、不安の助長、傷つける)が起こるかもしれません。
子供番組で「知恵遅れ」「チビ」「基地外」「文盲」「ポリ公」等の放送禁止用語を使うことに賛成の人はいないですよね。
ヒップホップ文化
一方、ヒップホップ文化ではラップでの表現方法として放送禁止用語を使う場合があります。
一般的に、ヒップホップ文化は表現の自由を大切にする文化であり、自分の経験や社会問題を率直に表すことが求められます。
そのため、放送禁止用語に該当する言葉を使うこともありますし、そのことに対する批判は多くはありません。
しかし、有名なラッパーがテレビやラジオで多くの人に配信するときや、大きな会場でのライブを行うときは、演出や歌詞の内容にある程度の配慮が必要になります。
表現の自由を制限・規制する基準はどこなのか?
以上のことから、
・同じ言葉によっても、多くの人に届く場合は表現に配慮する必要性が出てくる
・文化によっては許容される場合がある
ことが言えます。
よって、ある集団における表現の自由は、
・集団の人数
・集団内の雰囲気や文化
によって変化すると考えられます。
極端な話、人数が5人程度であれば暴言は許容されるかもしれませんが、1000人なら許容されないでしょう。
また、暴言が好きな人だけで構成されていれば許容されますが、様々な人が集まっている場合は許容されないと思われます。
結局、TPOによって表現の自由の線引きは動いていくのです。
まとめ
公共の福祉・誹謗中傷なのかどうかは「人数」と「文化」によって変化します。
人数が多いほど、その集団の文化や考え方によって表現の自由の線引きは変わります。
表現の自由の制限に明確なラインはないため、組織やグループ毎に決めておくか、雰囲気を察して自主的に制限しましょう。
結局ケースバイケースかよと思うかもしれませんが、表現の自由が制限されるかはケースバイケースです。
一般的にはアウトでも、少人数かつアンダーグラウンドな世界では許される(許容される)こともあります。
ただ、受け手側の人数が多くなればなるほど表現の自由は厳しく制限されることは世間を見ると間違いないですね。