動物に感情はあるのでしょうか?
あるとしたら、どのような感情を持っているのでしょうか?
猫や犬を飼っていれば動物に感情があるとすぐ分かるものですが、動物に感情はないと思われていた時期もあります。
今回は、動物が感情を持っているという様々な例や、感情があるかどうか分からない動物たちも感情らしきものを持っているという実験や研究の例を紹介していきたいと思います。
マザリーズ
マザリーズをご存知でしょうか。
マザリーズとは、赤ちゃんに声をかけるとき声が高くなってしまうあれです。
って声が高くなるあれです。
このマザリーズですが、日本だけではなく世界中の人類に見られる「人間」という種族が持っている特徴です。
人間以外にもマザリーズを持つ、つまり、赤ちゃんに対して声が高くなる動物がいくつかいます。
キンカチョウ、アカゲザル、リスザルはマザリーズを持っている動物であり、赤ちゃんに対して高い声で話しかけます。
それ以外にもイルカが「母親後」で子に話すことも判明しました。
単純に考えるなら、赤ちゃんに対して優しく高い声で話しかける時点で、これらの動物は「優しい」という感情を持っていると言えます。
どうして他の動物にもマザリーズが備わっているのか明確なことは分かりませんが、人間が持っている機能を他の動物も持っている例は多々あります。
例えば、セキツイ動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の腕の構造は非常によく似ています。
上図の赤・青・黄色の骨の部分を見てください。
手羽先を想像すると分かりやすいですが、我々セキツイ動物の腕は、肩に近い方の腕は1本、手に近い方の腕には2本の骨があり、この特徴はセキツイ動物に共通しています。
尾てい骨という尻尾の名残が人間についているように、我々と他のセキツイ動物には共通祖先がおり、その共通祖先の特徴が一部残っています。
遠い昔に分化した動物とは共通した性質を持っていないことの方が多いですが、人間から近い動物であればあるほど人間と似た機能を有している可能性は高くります。
つまり、「感情」という機能も、人間だけが持っているものではなく他の動物も持っている機能であるのです。
ロバとヤギの友情
具体的に、動物の持っている感情の例を見ていきましょう。
まずは、異種間の友情を成立させたロバとヤギの物語です。
ロバのジェリービーンとヤギのミスターGは劣悪な環境の家に閉じ込められていました。
不潔でひどい環境の中でしたが生まれた時からずっと一緒だった2匹ですが、カルフォルニア州の動物福祉局が保護し、別々の動物保護施設へ送られました。
別々の施設に送られた2匹でしたが、ヤギのミスターGは何も食べなくなってしまい、隅っこにうずくまってしまいました。
健康には問題ないはずなのに、何も食べなくなってしまったのです。
この施設ではロバを飼育したことがなかったので別々の施設に送られることになってしまったのですが、ジェリービーの存在に気付いたスタッフが往復3日かけてジェリービーンを連れてきてくれました。
ジェリービーンが到着するとミスターGは起き上がり、ジェリービーンの隣で一緒にご飯を食べ始めました。
その様子は動画にまとめられています。
ご飯も食べられなくなってしまうほどの、離れ離れになった悲しみ。
久々の再開に対する喜び。
これを見て動物に感情がないと言えるのでしょうか。
動物がするこのような反応のことを「感情」と呼ぶのではないかと多くの人は思っています。
グッピーと恐怖と個性
次に、グッピーを使った実験の例を紹介します。
とある大学の研究室で飼育されていた105匹のグッピーは恐怖体験をさせられていました。
まず、グッピーの個体が判別できるようにグッピーの鱗にポリマーで色を付けます。
グッピーたちは普段大きな水槽で餌を与えられ自由に生活をしているのですが、ある日突然1匹ずつ網ですくって1匹だけの水槽に移し、天敵に襲わせます。
天敵に襲わせるといっても、食べられるようにはしません。
サギの置物に襲わせたり、シクリッドをいきなり見せたりしました。
この体験をさせた後、グッピーを元の大きな水槽に戻すのですが、3日おきに4週間同じ実験を繰り返しました。
その結果、天敵に襲われたときに隠れたグッピーは数日後に襲われたときも隠れ、動けなくなったグッピーは数日後の実験でも動けなくなり、すぐ動けるグッピーは数日後もすぐ動けることが分かりました。
つまり、グッピーには個性があるのです。
グッピーに恐怖を感じる心があるとは言い切れませんが、天敵に襲われたときの反応が違うのは、恐怖の感じ方が違うからと言えるのではないでしょうか?
天敵に襲われる生物が恐怖の感情を取得していても何ら不思議ではありません。
ネコとキュウリ
Youtubeにあるこの動画を見てください。
キュウリを見たネコがビックリする反応をまとめた動画なのですが、その反応のしかたが可愛くて面白いです。
確実なことは言えませんが、人間を含めた一部の動物はヘビやクモを先天的に恐れているという考え・研究があります。
キュウリはヘビに似ているので、キュウリをヘビだと勘違いしてビックリする様子が上の動画の内容です。
ただ、猫を飼っている知り合いに本当にキュウリでビックリするのかどうか試してもらったところ、キュウリにビックリしませんでした。
どうしてキュウリにビックリするのかはわかりませんが、ビックリしている様子自体は上の動画で確認できます。
「驚き」という感情をネコが持っていることはハッキリと分かりますよね。
ロブスターと痛覚
スイスでは2018年からロブスターの生きたままの調理が禁止になっています。
無セキツイ動物であるロブスターは人間と同じような複雑な神経系を持たず、単純な神経系しか持ちません。
しかし、痛覚を持つ甲殻類がおり、
弱い電流を流した殻に入っているヤドカリは「痛そうな反応」を示し、次に少し強い電流を流すとヤドカリは殻を捨てて逃げました。
その後、殻を捨てない程度の電流を流して別の殻を与えると、多くのヤドカリが新しい殻に移りましたが、電流を流さなかったヤドカリにはそのような傾向は見られませんでした。
このような実験から、痛覚を持っている甲殻類がいることが分かってきています。
一部の甲殻類は「痛み」という感情を持つのです。(痛みが「不快」だという感情かもしれません。)
イカは夕食に出る大好物のために昼食をセーブする
最初に、「カニとエビ」を等間隔で配置して5日間にわたりイカのどちらに食いつくかを観察したところ、実験に使った29匹のイカの全てが「エビが好物」だということがわかりました。
その後、研究チームはイカを2つのグループに分けて実験を行いました。
1つ目のグループには「日中はカニ・夜はエビ」を与え、2つ目のグループには日中にカニを与えましたが、夜の餌がエビかどうかはランダムに決定しました。
16日間、この食事メニューを継続して観察した結果、確実にエビがもらえるグループのイカは、日中に食べるカニの量が明らかに少なかったのです。
一方、エビがもらえるか不確実な2つ目のグループでは、カニを食べる量を減らす様子は見られませんでした。
1つ目のグループのイカが特別に賢い可能性を排除するため、研究チームは両グループのイカを交代させて同じ実験を行いましたが、予想どおりイカはすぐさま夜に必ずエビがもらえることに気付き、日中に食べるカニの量を減らしたそうです。
エビが好きなイカは、夜にエビが貰えることに気付くとお昼ご飯をセーブするようになり、夜にエビが貰えるかどうか分からなくなるとセーブしなくなります。
つまり、エビの方が美味しいから好きだという感情があるいえるのではないでしょうか?
人間から遠い生物の心は理解しにくい
動物の感情を想像するとき、イヌやネコ、ウマやサルのような人間に比較的近い生物の感情であればとても想像しやすいです。
しかし、カエルやトカゲのように人間から遠くなっていくと、「感情なんてあるの?」という気持ちが強くなっていきます。
私たちとは脳や神経の構造が異なるため、感情をイメージしにくくなりますし、実際人間と全く同じ感情を全て持ち合わせているとは言い切れません。
イヌが喜んでたり悲しんでたりするのはすぐ分かりますが、カエルが喜びや悲しみの感情は分かりませんし、あるのかどうかも分かりませんよね。
虫や甲殻類等、人間から更に遠くなると、感情は一切想像できなくなってしまいます。
感情なのか、生物としての反応なのかの違いが分からないのです。
ロブスターは痛覚があり痛みを避ける傾向にあったとしても、感情と言えるかどうかが分からないのです。
「じゃあ植物に感情はあるのか?」という問いは全く解決していません。
一体どこまでの生物に感情があると分かるのか、これからの動向に注目していくしかないでしょうね。
まとめ
私たち人間はどうしても「人間って特別な存在なんだ」と思ってしまいますが、そうではありません。
この世の中に存在している生物全てが特別な存在であり、感情というものは人間だけが持っているものではないことを理解することが非常に大切です。
人間だけではなく、他の生物も尊敬できるような人間になりましょう。