グッドハートの法則とキャンベルの法則は、どちらも指標に関する法則です。
この法則は一見シンプルな概念ですが、当たり前に使っている”指標”に大きな落とし穴があることを知ることができる非常に大切な考え方です。
世の中って役に立たなそうな指標がたくさんありますよね。
指標にこだわり過ぎるせいで、逆に非効率的・非合理的になってることってよくあると思います。
今回は、指標に関する法則であるグッドハートの法則とキャンベルの法則についての説明をしていきます。
グッドハートの法則・キャンベルの法則とは何か
まず、グッドハートの法則とキャンベルの法則について説明します。
グッドハートの法則
グッドハートの法則…「ある尺度が目標になると、それは良い尺度ではなくなる」
グッドハートの法則は「ある尺度が目標になると、それは良い尺度ではなくなる」という法則です。
特定の指標が目標として使用される場合、その指標に対する行動が結果的にその指標の価値を失わせてしまうことがあります。
グッドハートの例
例えば、犯罪発生率について考えてみましょう。
もし警察が犯罪発生率を減らすことを目標にしたらどうなるでしょうか?
「犯罪発生率を減らすことを目標」にしたとき、正攻法ではなく、犯罪の報告数を減らすことによって犯罪発生率を落とすこともできますよね。
正攻法ではなく邪道を用いることでも目標自体は達成できてしまうため、一部の犯罪が報告されず、実際の犯罪発生率が実態よりも低く見える可能性があります。
「犯罪発生率を減らす」ことを優先するあまり、「被害届けを出させないようにする」、「犯罪を隠す」といった大きな問題を引き起こす可能性もあります。
他にも、犯罪率を減らすために、犯罪率の高い場所や時間帯を重点的に監視することも手法として考えられます。
しかし、犯罪者たちは警戒の厳しい場所を避けて別の場所で犯罪を行う可能性があるので、一部の地域で犯罪発生率が低減したとしても、結局他の地域で犯罪が増加するといった偏りが生じる可能性があります。
犯罪発生率は重要な指標ですが、犯罪発生率を減らすことを目的とすると、犯罪発生率がちゃんとしたではなくなるかもしれないのです。
キャンベルの法則
キャンベルの法則…「定量的な社会指標が社会的意思決定に使われば使われるほど、腐敗の圧力に晒され、監視すべき社会的プロセスを歪めたり腐敗させたりする傾向が強くなる」
キャンベルの法則とは「定量的な社会指標が社会的意思決定に使われば使われるほど、腐敗の圧力に晒され、監視すべき社会的プロセスを歪めたり腐敗させたりする傾向が強くなる」という法則です。
言い方は難しいですが、内容はグッドハートの法則と同じです。
キャンベルの法則の例
学校の教育を例にして考えましょう。
学校では(特に高校では)テストの点数で成績を付けることが一般的です。(最近は観点別評価が導入されましたが。)
点数を上げることが本来の目標ではないはずなのに、点数を成績の指標として設定するせいでテストの点数を上げることを目標として生徒も先生も考えてしまいます。
点数を上げることを目標として考えてしまうと、テストの点数を上げるためだけの教育を行ってしまいます。本来重要なはずの内容を扱わず、テストで得点を取るための勉強やテクニックに力を入れてしまうのです。
実際、テストの影響の少ない小学校の方が伸び伸びと教育できてますし、高校の方は受験勉強・定期試験対策のための授業になってしまう傾向があります。
他にも、点数を上げることだけを目標とすると、カンニングが行われる可能性もでてきます。
長期的に見ればカンニングは点数を上げる手段として効率が悪いのですが、短期的な手段としてカンニングをする人が出ても不思議ではありません。
これは、指標であるはずの点数が「指標ではなく目標」になってしまっていることが原因だと考えることができます。
点数中心の教育を行ってしまうせいで、結果として教育の質を落ちてしまうのです。
グッドハートの法則とキャンベルの法則の違い
グッドハートの法則とキャンベルの法則に大きな違いはありません。
強いて言えば、グッドハートの法則は経済学者の言葉、キャンベルの法則は社会心理学者の言葉であることが大きな違いです。
似たような法則は他にもあり、いろいろな場面で「指標を目標にすると、指標の意味がなくなるよね」ということが言われています。
コブラ効果
グッドハートの法則・キャンベルの法則と関連するものとして、コブラ効果というとある逸話が非常に有名です。
インドの植民地時代、植民地を統治していたイギリスのインド総督府は、コブラ(毒蛇)が市内に多く出没していることが問題視し、コブラの数を減らすために「コブラの死骸」に賞金を出す政策を立てました。
市民たちがコブラを捕獲しコブラが減ることを期待して作られたこの制度は、最初の内は効果的にコブラの数を減らすことができていました。
しかし、しばらくすると、市民たちはコブラを飼育することで死骸の数を確保するようになりました。
状況に気が付いたインド総督府はコブラの死骸の賞金を撤回したのですが、飼育されたコブラたちは放り出され、結果として市内のコブラの数が増えてしまいました。
コブラ効果は実際に行われた証拠がなく逸話とされていますが、同じようなことが1900年代初期のベトナムのハノイで起きています。
ベトナムのハノイの下水道にネズミが大量発生している
↓
ネズミの尻尾1本持ち込むと1セントの報酬を支払うようにした
↓
暫くすると、尻尾のないネズミが街中で目撃されるようになった
↓
なんなら、ネズミを養殖する人も現れた
↓
尻尾に対する報酬を辞めた
↓
結局ネズミは減ってない
というものです。こちらはしっかりと歴史的な証拠もの凝っているので、コブラ効果とは違って逸話ではなく事実となります。
指標を目標としてしまうと、こういう抜け道を探す人たちが現れるのです。
まとめ
グッドハートの法則とキャンベルの法則は、指標に関する法則であり、特定の指標を目標とすることで逆に問題を引き起こす可能性があるという重要な考え方です。
指標は物事を測ることできる良いものですが、指標にこだわり過ぎると不正や腐敗が生じてしまいます。
指標を絶対視せず、その指標が適切なのか・こだわり過ぎて本来の目標からずれていないかを見直すのが大切なのではないでしょうか。
参考文献