青少年犯罪を起こさないようにするためにはどうすれば良いでしょうか?
非行少年たちが将来的に犯罪を犯さないように考えられた手法がスケアード・ストレートプログラムです。
しかし、このプログラムは犯罪を抑制するどころか、犯罪を行う確率を高めているという研究結果が残りました。
今回は、スケアード・ストレートプログラムとは何かについて説明していきます。
スケアード・ストレートプログラムとは
スケアード・ストレートプログラムとは、非行少年・非行予備軍の児童を刑務所施設の見学に連れていき、受刑者と触れ合わせることで「こうはなりたくないな…」と思わせ、将来的に犯罪を起こさせないようにしようとした、アメリカで実施されたプログラムです。
スケアード・ストレートは「恐怖を直視する」という意味であり、自転車事故を起こさないようにするため「自転車事故の様子を動画で観る」「スタンドマンに協力してもらい、車にはねられてる様子を再現し直接見せる」等が当てはまります。
非行少年・非行予備軍の児童を刑務所施設の見学に連れていくスケアード・ストレートプログラムは、1967年から1992年にかけてアメリカの8つの州で実施されました。
参加者は946人のさまざまな人種の青少年(平均年齢15~17歳)であり、ほぼ全員が男性になります。
刑務所での生活の様子を見ることで非行少年の将来の犯罪が少なくなると考えましたが、なんと、わずかに犯罪率が上昇しているという結果が出てしまったのです。
刑務所の様子を見た946人のその後の人生の追跡データ
↓
9つの研究で、非行少年の犯罪率が下がるという有効性は見られなかったと報告
↓
その内7つの研究は、何もしなかった(刑務所に連れて行かなかった)人たちと比較。
何もしなかった人と比べ、刑務所に連れていった人の方が犯罪率が高くなると判明した。
つまり、スケアード・ストレートプログラムは犯罪率を落とすどころか、犯罪率を上げてしまう可能性のあるものだと分かったのです。
根拠のない思い込みで物事を決定する恐ろしさ
スケアード・ストレートプログラムは「根拠はないけど多分こうなるだろう!」という思い込みの典型例です。
人間は単純な生き物ではありません。
「刑務所の人を見せることで将来的に犯罪しなくなるでしょ」というほど単純ではないですし、そう簡単に人間の考えを狙った通りにコントロールすることはできないのです。
日本の小学校では「スタンドマンの方に協力してもらって自転車事故を再現するスケアード・ストレート」が度々行われていますが、この活動にエビデンスはありません。(私の知る限りではありません。あったら教えてください。)
「自転車事故の様子を見せたら、気を付けて運転するようになって自転車事故は減るだろう」というのはただの思い込みであり、確かにそうなるという明確な証拠はないのです。
何を行ったらどう変わるのか、しっかりと検証・研究する必要があるでしょう。
まとめ
スケアード・ストレートプログラムは、非行少年たちに刑務所の受刑者と接触させることで犯罪を防ぐ目的でアメリカで実施されたプログラムです。
しかし、刑務所の様子を見た非行少年たちの後の人生を追跡した結果、犯罪率が下がる効果は見られませんでした。
スケアード・ストレートプログラムは根拠のない思い込みの典型例です。
人間がそう思ったとしても効果がない場合も多々あります。きちんと検証・研究し、エビデンスのある行動を行えるようになると良いでしょう。