暗黙知とは

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暗黙知とは言語としてはっきり示すことができないような知識のことです。
一方、暗黙知とよく対比される言葉として「形式知」というものがあり、形式知とは、言語としてはっきり示すことができるような知識のことをいいます。

今回は、暗黙知とは何かについて、わかりやすく簡単に説明をしてきます。

暗黙知とは

暗黙知(tacit knowledge, tacit knowing)とは、言語としてはっきり示すことができないような知識のことであり、暗黙知という言葉を作ったマイケル・ポランニーの説明にちなんで、人の顔の認知に例えてよく説明されます。

私たちは、とある知り合いのAさんの顔を見ることで、「この人はAさんである」と認識することができます。
しかし、「どうしてAさんの顔だと分かったのか、他の人の顔ではなくAさんの顔であると判断した理由は何か」と聞かれると、うまく説明することができません。

「肌の感じ」「目が少し大きい」「髪型が黒のショートカットだから」「丸顔だから」etc…
と、頑張って説明することができるかもしれませんが、目、鼻、口、肌、髪、顔の形などが、頭の中でどのように理解しているのかを説明することができません。

Aさんについて全く知らない人に説明するためには、上の説明だけでは不十分であり、Aさんの顔がどのような感じなのかを説明するために、最後は結局写真を見せることになるでしょう。

私たちは人の顔を見分ける方法をうまく言葉にすることができません。
それは、私たちは語ることのできる知識以上に何かしらの知識を持っているということであり、そのような知識が暗黙知なのです。

ここでいう知識とは単純な知識だけではなく、顔の見分け方・自転車の乗り方などの、経験を得て獲得する知識でもあるため、「経験知」とも言い換えられます。

形式知とは

形式知(explicit knowledge)とは、言語や数式としてはっきり示すことができるような知識のことであり、明示知ともいいます。
形として表されているため、誰にでも伝えることのような知識です。

三平方の定理

例えば、ピタゴラスの定理(三平方の定理)は、文章・図・数式として明確に示すことができるため、説明することは簡単ですし、誰にでも伝えることが可能です。

暗黙知の第一項(近接項)と第二項(遠隔項)

暗黙知を提唱したマイケル・ポランニーは、暗黙知には2つの項目があるとしています。
そして、マイケル・ポランニーは、この2つの項目について説明する前に、とある実験を紹介しています。

その実験とは、被験者に多くのでたらめ文字の綴り字(つつりじ)を見せ、いくつかの特定の綴り字(ショック綴り字という)を見せた後に電気ショックを与える、ということを繰り返す実験です。
被験者はそのうち、ショック与えるかもしれない綴り字を見るだけで電気ショックを予想するようになるのですが、どのような綴り字のときに電気ショックを予想するのかを尋ねても、被験者は明確に答えられませんでした。

マイケル・ポランニーは、この実験において、ショック綴り字を暗黙知の「第一項(近接項)」、電気ショックを暗黙知の「第二項(遠隔項)」としています。
被験者は、電気ショックの予想はできるのですが、ショック綴り字を見たかどうかを意識することができません。ショック綴り字という第一項について知っている(電気ショックという第二項を予想することができる)はずなのですが、ショック綴り字という第一項を見たかどうかは分からないので、ショック綴り字がどこにあったのか、何番目であったのかを説明することができないのです。

ここで、上でも登場した人間の顔について、もう一度例に出します。
私たちは人間の顔を見分けるとき、まずは顔の一部分(第一項)を認識します。この第一項から人間の顔を特定の人の顔(第二項)であると認識することができるのですが、このとき私たちは第一項を意識することはなく、無意識のうちに第一項を通して第二項を理解しています。

つまり、私たちは第一項を直接理解することはできず、第二項を通して間接的に第一項を理解しているといえるのです。
このような現象が起こっているからこそ、暗黙知というものが存在しているといえるわけですね。

今回は暗黙知の構造についてのみ軽く触れましたが、マイケル・ポランニーによると、暗黙知は機能的側面、現象的側面、意味論的側面、存在論的側面があります。
暗黙知についてさらに詳しく知りたい場合は、『暗黙知の次元』を読むと良いでしょう。

 

暗黙知とは

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