考え方

本当の自分とは何か コンサータによる自己の連続性の喪失と<わたし>はどこにあるのかについて

本当の自分とは何か コンサータによる自己の連続性の喪失

本当の自分とは何か?

【3868】コンサータによって自己の連続性を失いつつあるを読んでから、本当の自分とは何かについて考えることが多くなりました。

考え始めてから3か月、自分の考えはまとまっていませんが、文章にすることで「本当の自分とは何か」についての考えをまとめていきたいと思います。

コンサータとADHD

コンサータは、ADHDの方に処方される有名な薬です。

ADHDとはもちろん「注意欠陥・多動性障害」のことですが、コンサータを服用すると注意を払えるようになり、多動性を抑えられるようになる効果が期待されています。

簡単に言うと、ADHDの人がコンサータを服用すると一時的にADHDが治ります。
(※分かりやすさ重視であるため正しい表現ではありません。)

私は使ったことがないので詳細は分かりませんが、どの媒体の情報を見ても「効果が絶大!」という感想を見ます。

一部では「合法ドラッグ」とも揶揄されるような薬であり、依存性もあることから、不正利用されないよう流通管理されている薬でもあります。

「本当の自分とは何か」という疑問がどこから湧いたのか

「本当の自分とは何か」という疑問はどこから湧いたのでしょうか?

イライラしているとき、つい強い言葉を使ってしまうことってありますよね。

ふざけんじゃねぇ!ぶっとばすぞ!
そんなつもりじゃなかったんだ…本当にごめんよ…

穏やかなときの自分とイライラしているときの自分…、同じ自分であるはずなのに、考え方や行動が全然違ってしまうことに悩んでいる人もいるのではないか。

「そんなの、どっちも本当の自分じゃん!」

と思うかもしれません。

しかし、コンサータを服用すると曇っていた空が快晴になったように頭がスッキリし記憶力も集中力も格段に上昇し、ADHDであるせいで対応が冷たかった人も、コンサータを服用することで、

「コンサータのおかげで本当の自分を取り戻すことができた」
「コンサータを飲む前は病気のせいで上手く自分を表現できていなかったんだ」

と思ってしまう or 思われてしまうことがあるそうです。

まさに、“コンサータの効果があるときと無いときで自分が違いすぎる”と言えるでしょう。

年に数回程度ならともかく、毎週のように自分が切り替わる経験をしている、自分が変わり過ぎて二重人格を体験しているように感じる人から「本当の自分とは何か」という疑問が湧いてくるのも納得です。

自己の連続性について

小学生の頃の自分と今の自分、外見も中身も様々な変化をしていますよね。

しかし、小学生の頃から今にかけて、変化はしていても自分は自分であり、同じ自分が連続しているという感覚を誰しもが持っていると思います。

このような感覚を自己の連続性といいます。

コンサータの効果が切れたとき、あまりにも自分が変化してしまうため”自己の連続性”が失われる気がしてしまうのでしょう。

自己の連続性は誰しもが持つ当たり前の感覚であると思いますが、自己の連続性なんてものは幻かもしれないと思うと恐ろしさを感じますね。

このまま考えても想像の域を出ないため、より正確に考えるため、書籍を参考にしながら考えていこうと思います。

<わたし>はどこにあるのか

【3868】コンサータによって自己の連続性を失いつつあるにて『<わたし>はどこにあるのか』という書籍が紹介されていました。

本書は、認知神経科学の第一人者であるマイケル・S・ガザニガ氏がスコットランドのエディンバラ大学で行ったギフォード講義の内容をまとめたものです。

前半(1~3章)は脳についての研究内容、後半(4~6章)は物理学・社会や法律、裁判や判例について話が発展していきます。

前半の脳科学についてが非常に面白い内容であったため、内容の簡単な紹介と本当の自分とは何かについて考えていこうと思います。

脳は並列分散処理

マイケル・S・ガザニガ氏は、脳は”並列分散処理”であると結論づけています。

今日では当たり前の知識となっていますが、ガンダムのパイロットのように自分を動かす中枢は脳にはなく、脳は互いに影響与え合うそれぞれ別のシステムの集合体なのです。

私は、お互いに影響を与え合うシステムといわれると、アマゾンの熱帯雨林に生息する軍隊アリが真っ先に思い浮かびます。(他にもライフゲームが有名な例ですね)

1匹1匹のアリは盲目であり知能もないため、1匹の軍隊アリを放っても何もすることができません。

しかし、アリ達を指揮する将軍がいないにも関わらず、何十万というアリが集まると、まるで知性を持った生命体のごとく動き始めることができます。

私たちの脳も軍隊アリと同様で、「私」という主体が「手を動かそう」「水を飲もう」と命令しているわけではなく、脳内の相互関係の結果、手を動かし、水を飲んでいます。

「私」という明確な主体が脳のとこかにいるわけではなく、何十万のアリが動いているように、脳全体の相互作用の様子を「私」として捉えているというイメージです。

脳が傷つけば人は変わる

「交通事故や転倒で脳を損傷すると性格が変わってしまった。」という話を聞くことがあります。

脳を損傷することで、怒りっぽくなったり注意散漫になったりしてしまうのはよく知られている症状の一つですよね。

例えば、前頭葉のある場所を損傷すると、重複記憶錯誤という「実際には一つしかない事象が複数存在する」と主張してしまう記憶障害になることがあります。

「それで、いまあなたがいるのはどこですか?」すると彼女はこう答える。

「メイン州フリーポートです。信じていただけないのはわかっています。今朝ポズナー先生から、あなたはいまメモリアル・スローン=ケタリング病院にいると言われました。それはいいんです。でも私は、メイン州フリーポート、メイン・ストリートの自宅にいるんです!」

そう言いはる彼女に、私はさらに質問した。「ここがフリーポートのあなたの自宅だとしたら、ドアの外にあるエレベーター、あれはどういうことですか?」彼女は落ちつきはらって答えた。

「先生、あれを設置するのにいくらかかったと思います?」

また、前頭葉外側部を損傷すると、順序立てて行動したり、先の計画を立てたり、一度に複数の作業を並行することができなくなります。

眼窩前頭皮質を損傷すると、善悪の判断能力を失うだけでなく、行動の抑制も弱まってしまい、衝動的で強迫的、攻撃的で暴力的な行動が増え、高次認知が機能不全に陥ります。

左側頭葉のウェルニッケ野が損傷すると、ウェルニッケ失語症という症状になり、書かれたり話されたりした言葉が理解できず、自身は周囲が理解不能な無意味なことをよどみなく話します。

つまり、脳が傷つけば人は変わってしまうのです。

分離脳患者への実験

突然意識を失って反応がなくなってしまう「てんかん発作」を繰り返し起こす”てんかん”という病気には、重度のてんかん患者に対して、脳梁離断術という右脳と左脳の連結を遮断するという最後の手段として使われる治療法があります。

(右脳と左脳の連結を遮断するといっても、脳幹という共通部分があるため、左右の連絡が完全に断たれるわけではありません)

左脳と右脳の連絡が遮断されると、どのようなことが起こるのでしょうか?

1右脳と左脳

右脳は感覚的な能力が高く左脳は言語力や論理力に優れていると言われています。

マイケル・S・ガザニガ氏は、分離脳患者に以下のような実験を行いました。

わたしはどこにあるのか

まず、右視野(左脳が担当)に一瞬だけスプーンの絵を見せ、「何か見えましたか?」と聞きます。

すると、患者は迷わず「スプーン」と答えました。

左脳は言語能力を司るので、右視野で認識した絵はきちんと言葉にすることができます。

 

2脳分離脳患者への実験

次に、左視野(右脳が担当)に一瞬だけ別の絵を見せ、「何か見えましたか?」と聞きます。

すると、患者は「何も見えませんでした」と答えたのです。

右脳で見た絵を言葉にできなかったのではなく、左脳は、右脳で絵を見たことすら認識していなかったのです。

 

3意識の二分化

右脳は本当に絵が見えていないのかを確認するために、さらに上図のような実験をしました。

先ほどと同様に、左視野(右脳が担当)に一瞬だけ絵を見せ、「何か見えましたか?」と聞きます。

言葉で答える前にモールス信号のキーを左手で打ってもらったところ、左手でキーを押したにもかかわらず、「何も見えませんでした」と答えたのです。

左脳は何も見えませんと答えたのにもかかわらず、右脳は絵が見えたと答えたという事実は衝撃ですね。

インタープリター・モジュール

マイケル・S・ガザニガ氏は、分離脳患者に対してさらに実験を行いました。

4脳患者への実験2

分離脳患者の右視野(左脳)左視野(右脳)に異なる二つの絵を見せます。

例えば、右視野(左脳)にニワトリの足の絵左視野(右脳)に雪景色の絵を見せます。

次に、左右両方の視野に色々な絵を見せ、前に見た絵と関連するものを選んでもらいます。

すると、左手(右脳)はショベルの絵を、右手(左脳)はニワトリの絵を選びました。

次に、どうしてそれらの絵を選んだのかの理由を話してもらいます(左脳)

5インタープリターモジュール

どうしてニワトリの絵を選んだの?という問いには

「ニワトリの足だからニワトリを選びました。」

と答え、どうしてショベルの絵を選んだの?という問いには

「ニワトリ小屋の掃除にはショベルを使いますからね」

と即答しました。

つまり、左脳はなぜ左手がショベルを選んだのか分からないにもかかわらず、無理やり理由を考えて答えたのです。

6インタープリターモジュール2

例えば、音楽という単語を見せると、左手は鐘の絵を選んだ。

なぜ鐘の絵を選んだのかと聞くと、左脳

「私が最後に聴いた音楽は、すぐ外で鳴っていた鐘だったんです。」

と答えます。

7インタープリターモジュール3

バナナという単語を見せ、カラーペンで左手に絵を描いてもらうと、赤色でバナナの絵を描きました。

左脳は赤という単語を見ているので赤を選ぶのは問題ないですが、左脳バナナという単語を見ていないのでバナナを描いた理由は分からないはずです。

しかし、なぜバナナを描いたのかを聞くと、

「こっちの手でいちばん描きやすいからです」と答えました。

この3つの例で一番大事なことは、本当はわからないにもかかわらず、無理やり話を作り説明しているという点です。

マイケル・S・ガザニガ氏は、持てる知識を総動員して、状況と矛盾しない後付けの答えをこしらえる脳の活動のことを「インタープリター」と名付けました。

このような現象は、私たちの日常生活にもよく現れます。

熱い鉄板に手が触れてしまったとき、反射的に手を離しますよね。

「うん?手が熱いぞ…?急いで手を離さなきゃ!」

とわざわざ考えません。無意識に行動できる仕組みが反射と言えるでしょう。

しかし、「どうして手を離したの?」と聞かれたら、「鉄板が熱かったから手を離した」と答えるのではないでしょうか?

本当は「反射的に体が勝手に手を離した」にもかかわらず、あたかも「自分の意志で手を離した」かのように答えてしまうのです。

このように答えてしまうのは、後付けで行動の理由を補完しているからというのがインタープリターの役割なのです。

ちなみに、意識よりも早く行動が行われることは科学で実証されています。

あなたは今、自分の意志でこの記事を読むことを決定したと思っているかもしれませんが、実際は、あなたが自分で決定したと感じたときよりも前に脳が決定を下しています。

例えば、左手と右手の両方にボタンがあり、どちらのボタンを押すかを決定してもらい、そのときの脳の様子をスキャンします。

すると、自分がどちらのボタンを押すか決定したと意識したよりも脳の方が7秒も早く判断を下しているという事実が判明しました。

インタープリターは、反射的に熱い鉄板から手を離したのを「熱いと感じたから手を離したんだ」と答えるかのように、どちらのボタンを押すかを脳が判断した結果を、後付けであたかも自分の意識がどちらのボタンを押すかを判断をしたと感じさせるのです。

つまり、自分が自分の意志で行動しているのではなく、脳が判断を下し行動した結果を、自分の意志で動かしていると後から感じさせているのです。

こういう言い方をすると怖いかもしれませんが、上記の内容が完全に正しいと証明されたわけではないですし、「どの家を買うか」「就活をどうするか」のような決定は、脳をスキャンしても分かりません。

ここまで書いて、「本当の自分とは何か」ということがよく分からなくなってしまいました。

今の自分の中の考えは、「脳の様々な機能が半自動的に体を動かし、体がどう動いているのかを説明する脳のプログラムを自分の意識と感じている」というものです。

つまり、脳がどれだけ発達し、どれだけ活動しているかが本当の自分なのです。

正直、かなりふわふわした不確実な内容になってしまったので、所詮ただの個人の考えだなという感が拭えません。

いつか、もっとしっかりと「本当の自分とは何か」について考える機会を見つけたいものです。

るなさ
るなさ
悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ

以上、ご愛読ありがとうございました。

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