トロッコ問題について、何かと耳にすることが多いですよね。
多くの人を救うために少数の人を犠牲にすることは許されると思いますか?反対に、少数の人を救うために多くに人を犠牲することは許されると思いますか?
今回は、人間の心理や倫理観を考えるための有名すぎる思考実験「トロッコ問題」について解説します。
トロッコ問題とは?
制御不能となったトロッコ(電車)が進んでいます。
このままだとトロッコの先にいる5人の人が轢かれて死んでしまいますが、あなたはレバーを使いトロッコのレールを切り替えることができます。
しかし、レールを切り替えると5人は死なずにすみますが、代わりに1人の人が轢かれて死んでしまいます。
あなたはレールを切り替えますか?切り替えませんか?
「誰かに電話して助けを呼ぶ」「5人に声をかけて避けてもらう」「電車のブレーキを直す」のようなレバーの操作以外の選択は禁止であり(日本人は他の選択を考えようとしがち)、レバーを引いたことによる法的責任も考えません。
5人を救うために1人を犠牲にすることができるか?
これがトロッコ問題です。
あまりにも有名なことから学校の道徳や総合的探究の時間の題材として使われていたり、マイケル・サンデルの正義の授業の導入にも使われたりしていますね。
さて、あなたはどちらの選択をしますか?そしてその理由は何ですか?
この場合、レバーを操作して5人を救うという選択する人が多いようです。
レバーを切り替える人の意見は「5人を犠牲にするくらいなら1人の犠牲で済む方が良い」という考えがほとんどであり、レバーを切り替えない人の意見は「自分は関わりたくないから」「数は大事ではないから」あたりの内容が多いでしょう。
トロッコ問題にはまだ続きがあります。
トロッコ問題派生
ここで、問題の内容を少し変えてみます。
先程と同じようにトロッコは制御不能のまま突き進んでいます。このままではトロッコが5人の人を轢いてしまい5人とも死んでしまいます。
今回のあなたはレバーの操作をする必要はありません。5人を救う手段は無いかと思われましたが橋から身を乗り出して今にも落とせそうな太った人がいることに気が付きました。
この太った人を落とせばトロッコを止めることができ5人を救うことができます。もちろん、抵抗されて落とせない可能性は0%とします。
あなたは5人を救うために太った人を落としますか?落としませんか?
5人を救うために1人を犠牲にするのは変わらないのにも関わらず、先程とは違いこの場合は太った人を突き落とさないという選択をする人が多くなります。
さっきと違い直接人を落とすので抵抗感があるという意見が多くなるのです。
この違いは一体何なのでしょうか?
トロッコ問題の答え方 ベンサムの功利主義とカントの義務論
トロッコ問題の答えの考え方としては、ベンサムの功利主義とカントの義務論が有名です。中高のどこかでベンサムとカントについて勉強したことがありますよね。
ベンサムの功利主義とは、「最大多数の最大幸福」というもので表されるように多くの人の幸せが全体の幸せに繋がるというような立場での考え方です。
功利主義的な考えでは行動の内容よりも結果の方が大切なので、どちらの場合でも5人を救うことを優先します。
一方、カントの義務論では最終的な人数を考えるのではなく過程の中にある道徳性を重視します。
太った人を突き落とすことに抵抗があるのはカントの義務論的な考えというわけです。
トロッコ問題を答えるときは数の差を気にするか道徳を気にするか、自分の考えと合う方を答えると良いでしょう。
AIによる自動運転のトロッコ問題
AIが有名になってきた現代において新しいトロッコ問題が生まれたことはご存知ですか?
AIによる自動運転の技術が発展したことにより新たな問題がニュースになりました。
その内容は非常に単純です。
AIが車を運転していたら急に子供が飛び出してきたとします。
車がこのまま進むと2人(何人でも良い)の子供を轢いてしまいますが、ブレーキは間に合わず急カーブをすることによって衝突を避けるしかありません。しかし、急カーブすると今度は老人を轢いてしまうことが分かっています。
あなたがAIの設定をする側の立場にあったとしたら、この場合は車をどのように設定しますか?
動物と人間だったら?
子供1人と子供5人だったら?
若者と老人だったら?
ホームレスと大企業のCEOだったら?
障がいを持つ人だったら?
命に優先度はあると思いますか?
これが現代のトロッコ問題です。
私はどの場合においても自分なりの結論を持っていません。いや、自分なりの結論が何であるのかに気付いていません。これから先、もっと勉強して身につけないといけない考えであると思っています。
トロッコ問題はしばしば「答えのない問題」という扱いをされてしまい議論が終了してしまいますが、私はいつの日かトロッコ問題を完璧に解明できるような理論が生まれることを期待しています。
これから「正義」の話をしよう
上にも動画を載せましたが、マイケル・サンデルの授業を書籍化した本が『これから「正義」の話をしよう』です。
トロッコ問題についても書かれており、この本を読んでトロッコ問題を知った人も多いのではないでしょうか。
ぜひ参考にしてみてください。