シュレディンガーの猫という有名な話をご存知でしょうか。
名前を聞いたことはあっても内容を知らない、内容を知ってはいるものの理解できていない人が多いのではないでしょうか。
今回は、物理教師である私が、シュレディンガーの猫とは何かについて可能な限り分かりやすく簡単に説明していきたいと思います。
シュレディンガーの猫とは何か
シュレディンガーの猫とは何か、思想実験の内容を見ていきましょう。
①猫を箱に入れる
②箱の中に、放射性物質・放射性測定器・ガス発生装置も入れる
③放射性物質が放射性崩壊すると、測定器が感知し、ガスが発生するようにする
④放射性物質が放射性崩壊する確率は50%とし、ガスを吸った猫は死んでしまうとする
⑤一定時間が経過した後、果たして猫は生きているのか?死んでいるのか?
シュレディンガーの猫を大雑把に説明すると、「箱の中の猫は生きているの?死んでいるの?」という問題です。
箱の中に猫と毒ガス(50%の確率で発生)を入れ時間を置くと、猫は生きているのでしょうか、それとも死んでいるのでしょうか。
生きてる状態と死んでる状態が同時に存在してると考えます
「生きている状態と死んでいる状態が同時に存在する」ということが、シュレディンガーの猫で一番分かりにくい点です。
シュレディンガーの猫が結局何が言いたいのか、どういう解釈なのかを説明していきます。
シュレディンガーの猫の結論 結局何が言いたいのか
シュレディンガーの猫で結局言いたいことは、「複数の状態が同時に存在している」ということです。
シュレディンガーの猫では、誰かが箱の中を見るまで生きている状態と死んでいる状態が同時に存在していると考えます。
違います。
「生きてるか死んでるか見るまで分からないよね、でも、見なくてもどっちかのはずだよね」という話ではなく、「本当に、生きている状態と死んでいる状態の半分ずつが存在していて、箱の中を見ることでどちらかになる。」という話なのです。
もし50%の確率で毒ガスが発生するのであれば、生きている状態が半分、死んでいる状態が半分同時に存在していると考えます。
どうしても「でも絶対さ、生きてるか死んでるかのどっちかになってるはずだよね?」と思うかもしれませんが、量子力学の世界では「同時に存在する」という現象が起きているのです。
なお、元々は「猫が生きている状態と死んでいる状態の両方で存在するなんてありえないよね」という内容だったのですが、量子力学では生きている状態と死んでいる状態が同時に存在することが判明し、逆に「生きている状態と死んでいる状態が同時に存在する」という話になりました。
シュレディンガーの猫を、「猫が生きている状態と死んでいる状態の両方で存在するなんてありえないよね」という内容と勘違いする人がいますが、それは誤りとなります。
シュレディンガーの猫を用いると理解しやすい具体的な例
シュレディンガーの猫を理解することで理解しやすくなる内容として、電子の軌道が挙げられます。
中学高校ではHeの電子配置を上図の左のように習います。
電子は粒であり、原子核の周囲をまわっていると習うのですが、本当は違います。
(いきなり正確に説明しても難しすぎる。理科では度々見られる光景です。)
電子はどこかに点として存在しているのではなく、上図の右のように原子核の周りの空間において一度に多くの異なる場所に存在していると考えるのが今日の化学の常識です。
例えば、Heの電子は上図の右のs軌道と呼ばれる空間に同時に存在していると考えます。
s軌道のどこかに電子があるのではなく、全ての点で同時に電子が存在していると考えます。
イメージは上図のような感じです。
「Heは電子を2個持ってるのだから、どこかに電子が2個あるはずだ」ではなく、「2個分の電子が電子雲の中に確率的に同時に存在する」という考えはシュレディンガーの猫と同じ考え方であり、量子力学ではよく見る光景です。
なお、電子が多くなるとp軌道、さらに多くなるとd軌道やf軌道などさらに複雑な電子雲が現れます。ここら辺は物理化学や無機化学の分野になりますね。
まとめ
シュレディンガーの猫は「箱の中に50%の確率で発生する毒ガスと猫を入れたら、猫は生きているか死んでいるか」という問題です。
「箱の中を見るまで生きているか死んでいるか分からないけど、箱の中を見なくても生きているか死んでいるかのどちらかだ」という考えは間違いで、「箱の中を見るまでは、生きてる状態と死んでる状態が同時に存在している」と考えます。
このような考えは量子力学に関する分野の考え方で、典型的な例として電子雲が挙げられます。
猫がかわいそうだろ!!