意味が分かるとさらに恐怖?! 本当に『怖い絵』 4選

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本当に『怖い絵』とは、どういう絵だと思いますか?

ホラー映画にはホラー映画の良さ、ホラー小説にはホラー小説の良さがありますが、怖い絵の良さは、絵を見て一瞬で恐怖を感じることができることと、時間をかけて意味を知ることでも恐怖を感じられることです。

誰もが知っているような有名な怖い絵はたくさんありますが、『怖い絵』といえば中野京子さんのベストセラーですよね。

2017年には『怖い絵』第1巻の刊行10周年を記念して、上野の森美術館にて「怖い絵展」が開催されました。
平日、仕事終わりに寄ってみたら、まさかの120分待ちで驚いた記憶もまだ新しいです。

怖い絵展

 

中野京子の『怖い絵』シリーズはとても面白いので、怖い絵について知りたい人にオススメです。

今回は『怖い絵』の中でも特に印象的な絵画を紹介していきたいと思います。

レディ・ジェーン・グレイの処刑

レディ・ジェーン・グレイの処刑 本当に『怖い絵』

レディ・ジェーン・グレイの処刑 ポール・ドラロージュ

『怖い絵』を語る上で欠かせないのが「レディ・ジェーン・グレイの処刑」です。

この絵を見るだけで、なんだか不思議な感覚にとらわれる気がしますね。

中央にいる目隠しをしている女性がジェーン・グレイであり、今にも処刑されようとしています。

ジェーン。グレイは古代ギリシアの書物を原文で読めるほどの才女だったとのことですが、様々な政治や宗教の思惑から1553年にイングランド史上初の女王として即位します。
しかし、その在位はわずか9日間でしあり、当時の年齢は16歳でした。

この絵について細かく見ていきましょう。

泣き崩れる侍女

まず、絵の左側には泣き崩れている二人の侍女がいます。
手前の侍女の膝元には宝石がありますが、この宝石はジェーン・グレイが直前まで身に着けていたものとして描かれています。
宝石を身に着けると処刑の邪魔になってしまうので、ジェーンではなく侍女が宝石を持っています。

目隠しされたジェーン

目隠しをしているため前が見えておらず、首切り台がどこにあるのか分かりません。
傍らにいる司祭の助けを借りつつ、首切り台がどこにあるのかを探しています。

また、手元をよく見ると結婚指輪をしているのが分かります。
ジェーンにはギルフォード・ダドリーという夫がいたのですが、ジェーンは夫であるギルフォードと共に処刑されました。

ジェーンは当時16歳の新婚であり、結婚してから処刑までは1年未満でした。

処刑人

右には斧を持った処刑人がいます。
腰の辺りをよく見ると縄とナイフを持っているのが分かります。
縄は固定をするため、ナイフは斧で首を潰したあとに、まだ繋がっている首の皮を切るためにあります。

なお、絵の色合いから室内での様子を描いていると思ってしまいますが、処刑は屋外で行われています。

メデューズ号の筏

メデューズ号の筏 本当に『怖い絵』

メデューズ号の筏 ジャック=エドゥアール・ジャビオ


メデューズ号の筏は1816年の海難事故を題材にしたフランス・ロマン主義の作品であり、1816年のフランスといえば1814年にナポレオンが退位した後、ルイ18世が王権復古を行った時代です。

戦争が終結し、メデューズ号がフランスの植民地セネガルへ移住者らを運ぶ途中、メデューズ号は座礁してしまいました。
メデューズ号の乗員は約400人だったのですが、救命ボードは250人分しかなく、残りの約150人は急遽作られた筏に乗ることになりました。

この筏は漂流してから13日後に発見され、そのとき、この筏では飢餓・暴動・殺戮・人肉食などの狂気的な悲劇が生じており、生存者はわずか15名でした。

当時のフランス政府はこの事件を隠蔽したのですが、生存者2名がこの事件の悲惨さを綴った書籍を出版したことにより大騒動となりました。

メデューズ号の艦長は王党派の亡命貴族であったことも隠蔽・スキャンダルの要因となっています。

描かれる死体

この絵を画像で見ると小さく見えるのですが、その大きさはなんと491×716cm 、約5m×7mです。
これはどういうことかというと、この絵に描かれている人は「実際の人の大きさとほぼ同じ」ということであり、直接見たときの衝撃は計り知れません。

この絵を描いたジェリコーはこの絵を描くために、病院に入院している重篤患者やパリの死体収容所の死体をスケッチすることでリアリティーを追求しました。

叫ぶ男たち

この絵は、手前に死者、描き奥に生者を描くことで、手前は死と絶望、奥は生と希望を表していると解釈することができます。
中間に位置する男たちから生への執着を感じます。

船を発見した男

この絵をよく見ると、遠くに船があることが分かります。
本当は皆させ細っていたはずなのですが、あえて筋肉質に描くことが絵画として魅力的ですね。

我が子を食らうサトゥルヌス

我が子を食らうサトゥルヌス 本当に『怖い絵』

我が子を食らうサトゥルヌス フランシスコ・デ・ゴヤ

次に紹介するのは「我が子を食らうサトゥルヌス」です。この絵は、絵の意味が分からなくても見るだけで怖いですね。


サトゥルヌスはローマ神話に登場する農耕神です。サトゥルヌスは英語でサターンと言うのですが、かの有名な悪魔サタンとは別です。

神話によると、サトゥルヌスは我が子によって玉座から追放されるという予言をされ、それに恐れを抱いたサトゥルヌスは次々と生まれてくる6人の子供を次々と丸呑みしたと言われています。

この絵もかなりの大きさであり、その大きさは143 cm × 81 cmです。

食人という狂気

神話では子供を丸呑みしたと言われていますが、この絵では子供を食い殺している様子が描かれています。
子供の身体から流れている赤い血や、サトゥルヌスの表情や光と陰の使い方から、カニバリズムという狂気が強調されていることが分かります。

この絵を描いたゴヤは当時70歳を過ぎており、迫りくる死や激化するスペインの内乱に対する不安・恐怖などの心情を表していると考えられていますが、諸説あります。

隠された男性器

我が子を食らうサトゥルヌスは、元々は壁を装飾するために描かれた装飾壁画だったのですが、ゴヤの死後、他の人の手によってキャンパスへと移植されています。

驚くことに、移植作業のときに撮影されたX線写真から、この絵が描かれたときはサトゥルヌスの男性器が勃起して描かれていたと判明しています。

まだ壁画であったときに剥落してしまったという説、移植作業中や修復中に塗りつぶされたという説など様々な説がありますが、真相は定かではありません。

夢魔

夢魔 本当に『怖い絵』

夢魔 ヘンリー・フューズリ

最後にヘンリー・フューズリの夢魔を紹介します。


夢魔という名前はあまり聞きませんが、淫魔・インキュバス・サキュバスという名前は誰しもが聞いたことありますよね。
夢魔とは、古代ローマ神話やキリスト教に登場する下級悪魔のことであり、夢の中に現れて性交をすると言われています。

女性の上にいる夢魔は眠っている女性に夢を見させ、夢の中で快楽を与えています。
この絵の女性は、苦しんでいるようにも光悦しているようにも見えますが、ただ1つ分かることは、彼女が目覚めたとき、目の前にいるのは男性ではなく醜い悪魔であるということです。

なお、男性型であればインキュバス、女性型であればサキュバスと呼びます。インキュバスはラテン語のincubo(のしかかる)が語源であり、サキュバスはラテン語の不倫の相手の愛人 (succuba)、もしくは、下に寝る (succubare)が語源であると言われています。

再製作された夢魔

夢魔は大人気となり、ヘンリー・フューズリは何度か夢魔を再製作しています。
1作目と同様、女性の上に夢魔が乗っています。

奥側が黒くなっており、夜であり闇の中にいるということを表していて不気味ですね。

Nightmareは夜の馬

こちらもヘンリー・フューズリが再製作した夢魔の1つです。
先程の作品と同様に、女性と夢魔が描かれているのですが、同時に馬も描かれていることに理由があります。

というのも、Nightmareという語句は「Night」「mare」、つまり「夜」の「馬」という2つの語句に分けることができ、馬を描くことで女性は悪夢(Nightmare)を見ているということを表していると考えられます。

 

どの絵画も、背景にある人間関係や神話、歴史などを知ることによってより楽しむことができます。
絵の背景をしることで、少しでも怖い絵を楽しむことができたのならば幸いです。

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