・慣性力とは
・遠心力とは
物理基礎で、ニュートンの運動の3法則の1つとして慣性の法則を勉強しました。
電車や車が急発進したとき、私たちは進行方向と逆側に引っ張られるような感じがする。このような力のことを慣性力といいます。
慣性力はとても身近にあるものですが、普段全く意識しません。慣性力を考えることで何ができるのでしょうか。
今回は、慣性力と遠心力についてわかりやすく簡単に解説していきます。
慣性力とは
加速度運動する観測者が感じる見かけ上の力
向きは加速度の向きと逆向きになる
$$F=-ma$$
慣性力とは、加速度運動する観測者が感じる見かけ上の力のことです。
電車や車が急発進したとき、私たちは進行方向と逆側に引っ張られるような慣性を感じます。
このような、慣性によって引っ張られる力のことを慣性力といいます。
加速し続けている電車の天井から物体を吊るすと、進行方向と反対側に傾きます。
電車の外にいる人(静止している人)から見ると物体は電車と一緒に加速しているように見えますが、電車の中にいる人から物体を見ると物体は止まっているように見えます。
物体にはたらいている力は張力と重力ですが、この2つの力だけだと力はつり合わず物体は静止しません。
電車の外にいる人から見ると物体は右向きに加速しているため、力はつり合わなくても良いのですが、電車の中にいる人から見ると物体は静止しているように見えるため、慣性力という力があると考えます。
電車が加速している向きと逆向きに慣性力があるとすると、物体にはたらく力が3つとなるため、力がつりあって物体が静止すると考えることができます。
このように、加速度運動している観測者にのみ見える見かけ上の力(実際にあるわけではない)のことを慣性力といいます。
遠心力とは
円運動している観測者から見た慣性力のこと
慣性力と同様に、加速度の向きと逆向きにはたらく
$$F=-mrω^2\\
F=-m\frac{v^2}{r}$$
遠心力とは、円運動している観測者から見た慣性力のことです。
実際に円運動しているときに感じる力であり、円運動していない人からは見えない力です。
「実際に円運動している人は、向心力の逆向きに慣性力(遠心力)を感じる」ため、日常生活で「遠心力が強くて吹き飛ばされそう」等とよく使いますね。
遠心力も慣性力と同様に、大きさはmaとなるので、
$$F=-mrω^2\\
F=-m\frac{v^2}{r}$$
の2つの式が遠心力となります。
向心力と遠心力の違い
向心力と遠心力の違いは、観測者が外から見ているか円運動しているかの違いです。
円運動を外(静止している人)から見ると遠心力はありませんが、一緒に円運動している人から見ると遠心力という見かけ上の力がはたらきます。
問題を解くとき、静止している人から見るか、一緒に円運動している人から見るか、どちらの方が解きやすいかは問題によって異なるため、慣れていくしかないでしょう。
例題
例題1
下図のように、車輪のついたなめらかな斜面を持つ台の上に質量mの物体を置いた。この台を下図の向きに一定の加速度で加速し続けると、物体は台の斜面に対して静止した。物体が台から受ける垂直抗力の大きさを求めなさい。ただし、重力加速度の大きさをgとする。
例題2
下図のように、右向きに一定の加速度で加速し続けている電車の天井に物体を吊るした。物体に繋がれている糸を切ったとき、電車の中にいる観測者から見た物体の動きとして、正しいものを①~④から1つ選びなさい。
まとめ
慣性力とは、加速度運動する観測者が感じる見かけ上の力のことで、遠心力とは、円運動している観測者から見たときの慣性力のことです。
どちらも、加速している向きと逆向きに大きさmaです。